映画「樺太1945年夏 氷雪の門」 「クロッシング」 レビュー
”日本初のシネコン”「キネカ大森」(東京・品川区)で名画座(2本立て)をやっていたので見てきました。
上映は12月17日で終わりだったけど、ちょっと衝撃を受けたので簡単な感想を書きます。
1本目
「樺太1945年夏 氷雪の門」
(監督:村山三男 出演:二木てるみ 他 1974年 日本 119分)
*公式HP http://hyosetsu.com/
1945年8月15日の終戦の後も、当時日本領だった南樺太に攻め込んできたソ連軍の無法と、最後の最後まで電話交換業務を続け、ソ連軍が迫る中「みなさん、これが最後です。さようなら」の通信を最後に自決した9人の日本人女性電話交換手たちの姿を描く作品。
女性交換手たちの職務への献身ぶりや、自衛隊が全面協力した戦闘シーン(だから出てくる戦車がソ連のではなく、元米軍の戦車なのだが、車両数が多 く、撮影には実弾も使用したそうで迫力がある)、避難民の悲劇など、見どころは多いが、それ以上に問題なのが、製作当時、文部省(当時)推薦も受け、前売 りが70万枚も売れていたというのに、ソ連からの圧力を受けて公開が中止になっていたということ。
外国やテロリストから圧力があるとすぐに屈してしまう傾向があるのが、わが日本。戦前の日本や現在の近隣の某国のようになんでも高飛車な態度がいいわけではないが、不当な圧力にすぐにひよるのは決して平和のためにはならないと思いますな。ヒトラーを増長させたチェンバレンと同じです。
なお、映像をデジタル化したとのことですが、リマスターしたわけではないので、画質は今ひとつ。家庭用ビデオの3倍録画みたいな感じだったのが残念。ただ、二木てるみはじめ、 岡田可愛、南田洋子、 藤田弓子、木内みどり、若林豪、丹波哲郎、黒沢年男、島田正吾などなど、ベテランや亡くなった俳優の方々の36年前の姿は見どころの一つです。
2本目
「クロッシング」
(監督:キム・テギュン 出演:チャ・インピョ 他 2008年 韓国 107分)
*公式HP http://www.crossing-movie.jp/
私は韓流映画には詳しくないので予備知識なしに観たのですが、衝撃だったのはこっち。
北朝鮮からのサッカー好きの脱北者親子(父親は元選手)がたどった運命を淡々と描いている映画です。が、描き方は淡々としているが、内容は壮絶。人権どころか、自由も建前の共産主義すら全くない”収容所国家”で生きるとはこういうことかと愕然とします。また周辺諸国も脱北者には冷たいので、話によけい救いがなくて、観客全体が慄然としていたのが伝わってくるほどでした。
この作品自体はフィクションですが、ニュースなどで見る北朝鮮の窮状とかけ離れているわけではなく、秘密警察が跋扈する社会がまともなはずもないですしね。こういう国なら外国人の拉致など意に介さないのが容易に理解できます。まさに人間を(もちろん自国民で、相手が子供でも)虫けらのように扱うとは、このことかと思い知らされる描写の連続でした。
キネカ大森はスーパーの中にあり、出口は売り場に直結していて、クリスマス前なので親子連れが買い物をしているわけですが、ただそれだけの光景が一瞬奇跡に感じられる(「それ町」の世界が楽園のように見える)、とそういう内容でした。
上映は終わりましたが、DVDかなにか、機会があればお薦めします。
※上記2本の配給はいずれも太秦(株)
*公式HP http://www.uzumasa-film.com/
(関係ないけど、関西テレビらしい撮影クルーが映像制作関係者の番組らしいものを、上映してない劇場を使って撮影してた。映画館が撮影に協力したのかな?映画館の運営も大変なんだろうなあと思う)
*以下にも参加しています。
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