讃岐うどんから見た世の中。
グローカルという言葉があります。
グローバルとローカルの合成語ですが、まさにグローカルなのが讃岐うどんを巡る世の中の動きです。
その内容を思いつくまま箇条書きにして見ると…
・讃岐はうどんの発祥の地というわけでもないし、他にもうどんで有名な土地がたくさんあるのに、知名度は一番である(弘法大師が伝えたうんぬんは伝説)。
・讃岐うどんの美味しさは基本的に麺自体のコシの強さ(堅いのではなく弾力がある)で、したがって醤油をかけるだけのぶっかけうどんなどという食べ方もある(なお、素麺とオリーブが名物の小豆島には有名な醤油メーカーもある)。
・つゆに関して瀬戸内海でとれる”いりこ”をだしに使うなど、海の幸にも恵まれている。
・讃岐うどんのおいしさは、たゆまぬうどん屋さんの努力と、味にうるさい地元住民に支えられている。
・交通も不便なセルフの店で100円のうどんを食べるために全国から飛行機まで使ってくる人もいる。こちらでは日本人全体のあくなき好奇心と行動力を見ることができる。
・使用される小麦粉は現在ではオーストラリア産が多い。そして、オーストラリアの方でも讃岐うどんに合った品種に研究・改良したものを日本に輸出している。
・オーストラリアの干ばつや小麦の国際相場の上昇は讃岐うどん店の経営を直撃する。
・昔の地元産小麦を復活させたいとの思いから、”さぬきの夢2000”という品種が香川県農林試験場にて開発され、これを使う店も徐々に増えている。
・香川でこれほど小麦を使ううどん作りが盛んになったのは、恒常的な農業用水不足のため、米だけでなく水のあまり要らない小麦も作る二毛作が盛んになったからではないかといわれている。
・讃岐・香川は常に水不足に悩まされているはずだが(雨の少ない瀬戸内海式気候と大きな川がないため)、実は讃岐うどん作りには大量の水を消費する。つまり、都市化が進む現代までは、水不足とは農業用水のことで、飲料水は井戸もあってそれほど困ったことはなかった。現代では高知の早明浦ダムから水を引く”香川用水”と昔からのため池のおかげで農業用水は困らないが、逆に都市部で水道水不足が起きるようになった。
・うどんをゆでた排水を川に垂れ流すと、量が多いので公害問題になる。
・香川の人間が年間にうどんを食べる量は当然日本一。おかげで米の消費量は全国で最低とか。なお、農業や塩田作業など重労働が多かった昔と違い、車社会の現代では、うどんとごはんの両方を食べすぎると炭水化物の取り過ぎで生活習慣病になりかねないので注意しろと医者は警告する。
・讃岐うどんが全国ブームになった直近のきっかけは、映画「UDON」でも描かれたように、地元タウン誌のグループ「麺通団」の雑誌の企画からはじまった。行政主導ではなく、地方の草の根民間から火がついたブーム。それ以前では、大阪万博の時に、当時の香川県知事が万博会場で讃岐うどんの売り込みを図って全国区の知名度をあげたらしい。
・香川県の”さぬきうどん振興協議会”は、年越し蕎麦と並んで、新たに”年明けうどん”を広めるべく運動を展開中。3年目にして既に全国46都道府県から商標使用申請が来ていて、順調に広まっている模様。
…などなどです。
他にも讃岐うどんブランドの問題とか、麺のコシの秘密物質”グルテン”とか、塩加減の”土三寒六”とか、名店とか、名物の人物とか、各地のソウルフードやB1グランプリに与えた影響はどうだろうか、東日本大震災で被害を受けた東北の漁業や農業や地元食品はどうなるのだろうなどと、話題は尽きないですが、”生身の人間の経済活動”って、こういうことをいうのかなあなどと考えつつ、うどんを食べる今日この頃でした。
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