「船の科学館」の本館が9月いっぱいで休館に。
※「船の科学館」本館と手前の船は初代南極観測船「宗谷(そうや)」。
1974年にオープンし、東京臨海副都心・お台場地区では最古参のランドマーク「船の科学館」の本館が、今年9月いっぱいで休館するそうです(「宗谷」の展示は継続)。
(※「船の科学館」は都内の博物館・美術館割引チケットブック「ぐるっとパス」の対象館です。もっとも、7月20日~9月30日は特別料金で大幅割引のようです。詳細は記事の末尾で)
*「船の科学館」9月いっぱいで本館休止
(2011.7/8 TOKYO MX Newsチャンネル)
6万トン級の豪華客船を模した形の建築で、展望台のあるフロアには海上保安庁の東京港内交通管制室もあり、開館当初から話題を呼んでいましたが、さすがに施設が老朽化してきたので、この度リニューアル改修工事を行うとのことです。
内部には数々の船の模型や潜水艦の潜望鏡シミュレーター、実物大エンジン模型があり、屋外にも深海調査船「しんかい2000」などの展示があって、近くには水上バスの船着き場や日本科学未来館、東京ビッグサイトやフジテレビなど名所が点在しているので、私も何回か行ったことがあり、大変名残り惜しいです(最寄駅は”ゆりかもめ”の船の科学館駅)。
※模型群で展示された船の発展の歴史(左)と屋外展示の「しんかい2000」(右)。
※水上バスの発着場(左)とすぐ近くの「日本科学未来館」(右・今年10周年だそうです)。
・東京水辺ライン「水上バスで行こう!」オフィシャルサイト
・東京都観光汽船のHP
以前には、今の駐車場地区に旧日本海軍の大型飛行艇・二式大艇(にしきだいてい)が展示されていて、この機体は元々は現在の香川県三豊市詫間(たくま)町(”ロボコン”によく出場している詫間電波高専のあるところ。浦島太郎の伝説もある)の海軍詫間航空隊基地にあったものです。戦後米軍に接収されて性能試験の後保管されていたものが、1979年に日本に返還され、長らくここで展示されていました(現在は鹿児島県の海上自衛隊鹿屋(かのや)航空基地・史料館 で屋外展示中)。
※写真は2004年2月8日に、九州南西海域工作船事件(いわゆる不審船事件・2001年)で、沈没後引き上げられた不審船の中から見つかった武器の展示(下の2枚)を見に行った時の二式大艇の様子(上の2枚)。鹿屋へ移設するため、解体工事中でした。不審船の方は、現在、横浜市の海上保安資料館横浜館(横浜海上防災基地の「工作船展示館」)に保存・展示されています。※
※現在の”不審船”の様子はこちら(横浜海上防災基地の「工作船展示館」の紹介ページより)。
引き上げ後、最初の2003年からしばらくは、この船も、船の科学館で展示されていました。
※ちなみに、二式大艇の飛行艇としての性能は、第二次大戦当時も戦後かなりの間も世界的レベルの高性能で、その技術を引き継いだ海上自衛隊の新型救難飛行艇US-2(新明和工業製)も世界トップレベルの性能です。そのため、民間転用して海外輸出する努力も行われているようです。※
※鹿屋で屋外展示中の二式大艇(鹿屋航空基地史料館の紹介ページより)。
※最新型の救難飛行艇US-2(海自HP装備品ギャラリーより)。
(歴史的資料=史料の展示施設が史料館、一般的な展示施設が資料館ということが多いようです)
海事関係の博物館は全国にありますが、香川県琴平(ことひら)町の金毘羅(こんぴら)さんの参道の石段の途中には「海の科学館」(琴平海洋博物館)があります。これは金毘羅さんが海上交通の守り神だからです。境内の絵馬堂では商船会社や海上自衛隊から奉納された絵馬を多数見ることができます。金毘羅さん周辺には、他に昔の灯台の高灯籠や、有名な金毘羅歌舞伎・金丸座(かなまるざ)などもあります。
*金刀比羅宮のHP
*琴平町観光協会のHP
*海の科学館(琴平海洋博物館)のHP
*海上自衛隊鹿屋航空基地のHP
*第三管区海上保安本部のHP
また、「船の科学館」にもゆかりの深い、故・笹川良一氏が母親を背負っている”孝子像”が日本財団(旧・日本船舶振興会)や競艇場などの関連各所にありますが、あの像は笹川氏が金刀比羅宮(ことひらぐう)の石段を登るときに母親を背負った時の様子だそうで、船の科学館も香川といろいろご縁があるようです。
なお、屋外展示の、初代南極観測船「宗谷」(そうや)の保存・展示は続けられますが、維持費などの関係で、旧国鉄の青函連絡船の「羊蹄丸」(ようていまる)は保存・展示を終了し、廃船となる見込みです。同船内部には昭和30年代の国鉄青森駅の様子を再現した「青函ワールド」などもあり、見に行くならいつ?今でしょう!(予備校のCMか…)。記念イベントも色々企画されているようですので、この夏休みが最後のチャンスです。ちなみに、今月18日(7月の第3月曜日。元々は7月20日)は「海の日」です。
※上の写真が初代南極観測船「宗谷」。遠方に見えているのがフジテレビ社屋。下が青函連絡船「羊蹄丸」と、船内の昭和30年代国鉄青森駅のレトロ風景を再現した「青函ワールド」の様子です(人物は全部人形)。※
※新聞は地元の「東奥日報」と「北海道新聞」。「道新」の見出しに”原子力三法案可決”とあるので、昭和30年12月の新聞だと思われます。
※右の写真は連絡船の乗船口と”赤帽さん”の仕事風景。奥にディーゼル機関車が見えます。
青函(せいかん)連絡船(青森県・青森港-北海道・函館港間。1988年の青函トンネル開通で廃止)では、他に、「八甲田丸」が青森県の青森港で、現在一般公開されています。
*青森市港湾文化交流施設・青函連絡船メモリアルシップ八甲田丸のHP
宇高(うこう)連絡船(岡山県・宇野港-香川県・高松港間。1988年の瀬戸大橋・児島-坂出ルート開通で廃止)の方は、「讃岐丸」が現在カーフェリーとしてインドネシアで活躍するなど、全て外国に売却されるか廃船され、記念施設として公開されている船はありませんが、 高松港旅客ターミナルビルの3Fに宇高連絡船記念展示場があり、往時をしのぶことができます。青函航路は片道約4時間なので大型船(約8,300t)でしたが、宇高航路は約1時間で船が小さい(約3,000t)ということも関係があるのでしょう。
ちなみに、かつての宇高航路にはホバークラフト(「とびうお」号)も就航していて(連絡船と同時に廃止)、連絡船が宇高間片道1時間かかるところを、20分で結んでいました。
なお、宇高(うたか)国道フェリー(今年で50周年)や、瀬戸内海の島々を結ぶ各フェリー航路は政府の交通行政の迷走に耐えつつ、現在もなんとかがんばって営業しています。
*宇高国道フェリーのHP
*四国フェリーグループのHP
*高松港旅客ターミナルビルのHP
※香川県県民ホールから見た高松港(左)とJR高松駅構内にある”連絡船うどん”の店(右・連絡船の就役時は後部デッキに讃岐うどんコーナーがあった)。
*参考記事:ゴルゴ13も関与した高松の「日アセアン会合」無事開催!(2011.6/16)
*以下の動画はYouTubeの投稿動画から。上段は宇高連絡船のうどん店の様子(汽笛の音が鳴ります)と、青函連絡船の動画。下段は宇高航路のホバークラフトと、砕氷艦二代目「しらせ」処女航海の模様です。
☆一方、戦後の南極観測船(砕氷艦)は、初代が「宗谷」、二代目が「富士」、三代目が「しらせ(初代)」、現在は「しらせ(二代目)」で、南極観測は文部科学省、船の運用は海上自衛隊が行っています。
二代目の「富士」は「名古屋海洋博物館」で公開中で、三代目の「しらせ(初代)」は気象情報会社の「Weather news(ウェザーニューズ)」社が引き取り、「SHIRASE」となって、普段は千葉県の船橋港に係留されて気象観測に活用され、申し込みをすれば無料で見学できます。
(「SHIRASE」は7月8日から1週間、福島県小名浜港で停泊し、東日本大震災で被災された方々を励ます活動を行っています。)
*(株)ウェザーニューズ SHIRASE Official Website
*名古屋港水族館・名古屋海洋博物館のHP
*文部科学省”南極ワンダー”のページ
*国立極地研究所のHP
*海上自衛隊のHP
*関連記事:
・映画「SPACE BATTLESHIP ヤマト」(実写版)レビュー(後半部分)(2010.12/1)
・海のもしもは118番(2011.1/18)
・看板の博物館に行ってきました。(2011.7/6)
※お得情報:東京や関西では、いくつもの博物館・美術館が割引で利用できる「ぐるっとパス」というチケットブックがあり、東京分は「船の科学館」も対象館です。夏休みに子供の自由研究の付き添いを兼ねて、ミュージアム巡りをするのも良いかも。なお、下記のように「船の科学館」は7月20日~9月30日まで特別料金になる模様です。ご参考まで。
*船の科学館・本館休館後追加リンク:「船の科学館 また会う日まで・・・」(東京MXニュース 2011.9/30)
追記:屋外展示されていた「羊蹄丸」は、愛媛県の産学官連携組織「えひめ東予シップリサイクル研究会」への譲渡が決まったとのことです。
*船の科学館の発表(PDF):船の科学館 青函連絡船“羊蹄丸”無償譲渡先の決定について(2011.11/8)
*以下にも参加しています。
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