最近の我が国では、責任ある立場にも関わらず、自国の防衛問題について基礎的な知識にすら欠ける方が多いようです。
※年刊「防衛ハンドブック」。3月には新年度版が出る予定です。
日本は第2次世界大戦前~戦中の帝国憲法下での軍国主義、敗戦、帝国陸海軍の解体、新憲法下での警察予備隊→保安隊→自衛隊の創設、憲法9条問題、日米安保条約問題、基地(米軍のも自衛隊のも)問題、冷戦下での国内外での左右両勢力などの対立と論争、自衛隊の国際協力活動、冷戦後の日本周辺の安全保障環境の変化などなど、といった非常に複雑な社会情勢の変遷があり、防衛問題への関心の有無や世代によって、その知識に大きな差があるのも多少はやむを得ません(学歴には全く関係ありませんが)。
しかしながら、防衛問題は国の根幹に関わることであって、けっこうな年齢の政治家や社会的に責任ある立場の方が自衛隊に関する基本的知識もないのでは困ります。
※とりあえず防衛省のKIDS向けサイトで勉強する方法もある (^_^;)
政府や自治体なら災害派遣の要請や自衛隊員の募集業務にすら困るでしょうし、特に地方では自衛隊は有力な就職先候補でもあります。駐屯地や基地も、地域によって削減してほしいところもあれば、誘致したいところもあり、その事情も様々です。
そもそも、なぜ自衛「隊」で自衛「軍」でないのか、歩兵部隊を「普通科」、工兵部隊を「施設科」というのか、階級も将佐尉官を大中少でなく一二三で呼び、軍曹や兵はなぜいないのか、英語ではどう言うの?、「武器輸出」と自衛隊の海外での「武器使用」の原則に関わる問題とは?、などなど・・・。
学校の歴史の授業では現代史はほとんど省略され(これにも社会的な事情があるわけでして)、試験にも出ないので、事情を知らない人には疑問点だらけなことでしょう(2007年1月まで防衛省も「庁」だったし、さらに大昔は戦車も「特車」といってました)。
かつてあった、日本社会の、軍や自衛隊アレルギーが災害派遣の実績などによって減ったとはいえ、このあたりの「微妙な事情」について知らないと、必ず舌禍事件を惹起します。
そういうわけで、手頃に日本の自衛隊・防衛問題について学習できる便利な本が、「防衛ハンドブック」(朝雲新聞社刊:防衛省共済組合の機関紙を出しているところ)です。
これは年刊で、毎年発行されており、価格は1,680円(平成23年版)です。
歴代政府の防衛問題に関する公式見解や憲法解釈、国会答弁、自衛隊の駐屯地や基地、組織、予算や日米安全保障条約、国際協力活動に関する基本的情報がコンパクトにまとめられています。
最新兵器好きの少年ならカッコイイ写真集やフィクションだけでもいいでしょうが、防衛問題に関係や関心のある大人の場合、自分だけでいろんな(それぞれの著者の立場による主張が入った)書籍やネット情報を調べまわる前に、「防衛ハンドブック」の最新版を通読しておけば関係者にバカにされる事態は防げるでしょう(約1,000頁ありますが、大部分はデータなので、政府答弁などのあたりを重点的に見るといいです)。
あと、「防衛白書」と「自衛隊装備年鑑」(DVD版もある)、日々の新聞などの報道をチェックしておけば、とりあえずは及第点。
日本の国防・防衛問題に関して、理論武装と言うか、理論防衛のためには、これぐらいの学習とお勉強は必要でしょう、ね。
関連カテゴリー : 防衛関連・自衛隊
※アニメ「エヴァンゲリヲン」に出てくる組織・ネルフの階級は一尉や三佐、「ケロロ軍曹」では軍曹や伍長・・・。そういえば、「ケロロ軍曹」で日向冬樹くんの声を演じていた川上とも子さんは昨年(2011年6月)亡くなったとのことです。合掌。
※これ(表紙)は、戦前大流行した犬の兵隊「のらくろ」。兵隊から大尉まで昇進。除隊後は大陸に渡ったり、帰国して喫茶店のマスターになったとか。
*以下にも参加しています。
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