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2012年3月 1日 (木)

危機の仕事術。

先日(2012年2月28日)、「福島原発事故独立検証委員会」(民間事故調:財団法人日本再建イニシアティブが、昨年の東日本大震災での政府の原発事故対応を民間の立場で検証した「調査・検証報告書」を発表しましたが、その評価内容は厳しいものでした。

*NHKクローズアップ現代「“原発情報”クライシス ~日本は何を問われたか~」(2012.2/29放送)

長年の「安全神話」や、それによる「思考停止」、政府の危機管理の不慣れさの影響が出てしまった形ですが、これは日本人全体の課題でもあります。

そういうわけで、最近刊行された「危機の時とそれに備える仕事術」の参考書として興味深い本を見つけましたのでご紹介。

その1) ”東日本大震災 石巻災害医療の全記録” 石井正 著 講談社ブルーバックス 940円+税

東日本大震災 石巻災害医療の全記録 (ブルーバックス)

※著者は石巻赤十字病院の外科医師であるとともに、宮城県災害医療コーディネーター。地震と津波によって行政機構も他の病院も機能がマヒした中、22万人を抱える石巻地域でほぼ唯一の医療機関となった石巻赤十字病院において、被災者救護に奮闘した人々(外部からの応援医師や自衛隊、ボランティア、民間業者など関係者全てを含む)の生の記録です。

石巻赤十字病院の活動は、NHKスペシャル 「果てなき苦闘 巨大津波 医師たちの記録」としてテレビでも放映され、この番組は<「地方の時代」映像祭>で2011年グランプリを受賞したとのこと。

日本赤十字社の病院(医師や看護師も)は、一般の病院と違い、戦時あるいは災害時には、救護活動にあたるよう普段から準備・活動してはいますが、東日本大震災ほどの状況は滅多にありません。この記録は教訓として非常に貴重だと思います。

※石巻赤十字病院~東日本大震災 初動の記録~(日赤PRCh)

■関連書籍:「石巻赤十字病院の100日間」(小学館)

*日本赤十字社のYouTube公式チャンネル

その2) ”自衛隊の仕事術” 久保光俊/松尾喬 著 こう書房 1,400円+税 

自衛隊の仕事術

※著者の久保氏は元陸自3佐、冬季遊撃レンジャー資格を持ち、冬季戦技教育隊の叩き上げの教官だった方です(松尾氏はスポーツ事業などを主催する会社の会長)。本書は、名前のとおり、自衛隊での仕事の進め方や教育・訓練の方法について一般向けに解説したもので、東日本大震災の災害現場など、困難な状況下で機能的に活躍できる人間・組織をどう育成し、業務をすすめるのかが分かりやすく説明されています。

内容例を挙げてみると、
・広くを視よ、遠くを視よ
・行き詰まったら、何でもいいからまず動く
・「正早安楽」すれば作業は仕事になる
・「管理の5要素」は「人・物・金・時間・場所」
・「優先順位」が立てにくければ「劣後順位」を
・依頼にはすべて「時間見積り」を告げる
・予備は30パーセント持て
・情報無視の努力は徒労に終わる
・リーダーはリーダーを演じるべし
・好かれることと信頼されることは違う
・密室の暴君になるなかれ
・「一令一動」の原則を貫く
・部下教育の最大の敵はマンネリ化と知る
・「1対30」ではなく「1対1×30」を
・説明後の「逆質問」を習慣化する
・訓練で殺して、実戦で生かす
・知らないことは知らないと申告させる
・マネしたくなる気持ちの格好いい人になる
・「見る」と「視る」の違いを教える
・「和を以って滅びる」ことなかれ
・人それぞれの感じ方を否定してはいけない
・「機会教育」と「計画教育」を使いわける
・「つもり」を排除する
・なんでも話題にし、タブーをつくらない

・・・などなど、どれも明瞭・簡潔で、民間企業の通常業務にも参考にできそうな内容ばかりです。

特に私がこの本を推薦するのは、自衛隊という組織が、旧軍の失敗や悪弊を繰り返さないように、常に内外からの指摘を受けて試行錯誤しているからです。

旧軍といっても、我々と同じ日本人が作った組織。軍部にあった欠点は日本人が作る他の組織にもあるでしょう(特にお役所には)。また、自衛隊で訓練しているのはいつも当代の「現代の若者」(1950年代の高度成長期前までは日本人の8割は農山漁村部に住んでいて大家族が普通でしたが、現代では逆に8割以上は都市部に暮らし、核家族で子供は一人っ子や2、3人の方が多数派)でもあり、これが、一般の人が読んでも参考になると思う点です。

なお、本のカバーやアマゾンの紹介文に「陸上自衛隊北部方面・・・」とあったりしますが、もちろん正確には「北部方面」。最近はマスコミでも旧軍経験者が減って(20年くらい前まではテレビの東京キー局にも”硫黄島帰還兵”の方がいたりしました)、他方で自衛隊に詳しい人は多くないので、自衛隊アレルギーがひどかった30年前よりも初歩的な間違いが多くなっている点には留意して下さい。”初歩的”といっても公の場所で間違うと、必ず問題になります。

以下、その他の参考本)

石巻赤十字病院の100日間 石巻赤十字病院、気仙沼市立病院、東北大学病院が救った命 ナース発東日本大震災レポート―ルポ・そのとき看護は

河北新報のいちばん長い日 震災下の地元紙 巨震激流 (3.11東日本大震災)6枚の壁新聞 石巻日日新聞・東日本大震災後7日間の記録  角川SSC新書 (角川SSC新書 130)

※仙台市に本社のある東北地方のブロック紙・河北新報の震災下での活動状況は、2012年3月4日、テレビ東京系でドラマ「『明日をあきらめない…がれきの中の新聞社』~河北新報のいちばん長い日~」として放送される予定です。

※石巻の地元・地域新聞社石巻日日新聞社が、印刷設備壊滅状態の中、手書きで6日間だけ発行した「6枚の壁新聞」は、現在、アメリカ・ワシントンD.C.の「報道博物館」(NEWSEUM) に永久展示されています。この壁新聞をめぐる逸話は日本テレビで2012年3月6日、ドキュメンタリードラマ「6枚の壁新聞」として放映される予定です。

報道機関にも全国規模のテレビのネットワークや全国新聞から、複数県をまたいで広域をカバーするブロック紙(河北新報など)や県単位の地方紙、県内のさらにその一地域に密着する地域紙(石巻日日新聞や三陸新報)など、様々なメディアがあり、それぞれの視点による報道があって参考になります。

*日本新聞協会・メディアリンク(テレビ局等も含みます)

メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故 被災地の本当の話をしよう ~陸前高田市長が綴るあの日とこれから~ (ワニブックスPLUS新書) 自衛隊救援活動日誌  東北地方太平洋地震の現場から

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫) 大本営参謀の情報戦記―情報なき国家の悲劇 (文春文庫)組織は合理的に失敗する(日経ビジネス人文庫)

平時の指揮官有事の指揮官―あなたは部下に見られている (文春文庫)マネジメント - 基本と原則  [エッセンシャル版]本当に使える企業防災・危機管理マニュアルのつくり方―被災現場からみつめたBCP

「想定外」に強い事業継続計画のすすめ―BS25999で高める危機対応力 防災・危機管理の再点検―進化するBCP(事業継続計画) パイロットが空から学んだ危機管理術

第三の敗戦 失敗学のすすめ (講談社文庫) 状況判断―まず計算し、しかる後これを超越せよ

職業としての政治 職業としての学問 (日経BPクラシックス) 一下級将校の見た帝国陸軍 (文春文庫) 「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3))

※特におすすめは日本人が陥りやすい「組織の思考停止」や外部の一般情勢とは無関係に動き続ける「組織の自転」の不条理を、戦場で身をもって味わわされた、作家・評論家の故・山本七平氏著:「一下級将校の見た帝国陸軍」。東京で育った普通の青年が戦時中に召集(徴兵)されて下級士官教育を受け、フィリピンの戦地に送られた際の実体験が生々しく綴られています。

それから同氏の「空気の研究」も重要。最近の日本人は場の空気を読むことばかりに気を使っていますが、それも度を過ぎると「集団の暴走」に歯止めをかける人が誰もいなくなり、ついには全員揃って破滅の道へ。注意注意です。

*ちなみに、「戦記・戦史」モノ(特に第二次大戦の日本関連)に関しては、学者の書いたものよりは、実際に戦地に行った人が書いたものの方(絶版が多くなってきたのが残念)が、参考になることが多いと思います。というのは、学者の場合、良心的だとかえって「後世の後知恵」を避けるために「当事者批判」を避ける傾向があり、当事者の回顧の方が比較的率直に失敗を反省している場合が多いからです(そうでないこともある…)。あくまで大体の傾向ですが。

参考記事 :
・ディズニーリゾートの危機管理(2011.5/9)
・自衛隊の災害派遣と日赤の特殊医療救護車-役に立った備え(2011.3/18)
・ドラッカーがNHKアニメ「もしドラ」に!(2011.4/25)

※「福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書」は大震災一年後の2012年3月11日発売です(税込1,575円)。
福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書

※政府の対応はよく「場当たり対応」といわれますが、それはいわゆる「学校秀才=永遠の受験生」の「本質」。目の前の「試験問題(課題)」に「反射的」に対応しているのであって、本人らは「真剣にやっている」のです。彼らはずっとそうやって「受験生活」(確定した答を”学習”してるのであって、”研究”とは違う。試行錯誤の経験がない、というよりそれを”非効率”として排除している。準備された”模範解答”がなければそこで”思考停止”。世の中が”想定外”だらけになるのも当然)を送ってきたわけですから。

ただ「指導教官」がおらず「模範解答」や「強制的な締切時間」のないところで「事前準備」もできない事案に関しては「解答」しようがなかっただけのこと。幕末も戦前も今も同じでしょう。

本当に、どんな問いかけをしても子供のように”だんまり”するお役人は珍しくありません。マニュアルにない事を質問(出題)する方が悪いという雰囲気で、用意された答がないから”対応不能状態”。フリーズしたパソコンを見ている気分になります。

戦略と戦術、目的と目標、目的と手段、主体と客体などなどについて、区別して考える習慣も乏しく、「用語」の意味を機械的に覚えてはいても、それが実務上の思考パターンに反映されないようです。

また、「課題や方針を設定」する行為は、そもそも「政治家の役割」であって「官僚の権限」を超えた行為でもあります。「指揮官」(トップ)が「参謀」(補佐官)をただ怒鳴り散らしたり、逆に、指揮・統制を丸投げしたのではどうしようもない。学校なら「級長」さんの上に「担任の先生」がいますが、行政機構で政治家が指導力を発揮できなければ、組織は船長のいない船のごとく漂流。目的が不鮮明となった組織は、目前の日常業務をこなすことが最優先となり、ついには手段と目的が転倒して、あさっての方向へ暴走することとなります。

世間(=国民=有権者=消費者=常識的感覚etc.)知らずの、「なんとか村」をつくって「コップ内闘争」をしたがる、井戸の中の「自称エリート=ミスター純粋培養」に危機管理を期待するのは無理というものです。

明治を作ったのは幕末の人、戦後を作ったのは敗戦を生き残った人でした。次代を作る我々は今大変な時代にいるようです。 (-_-)

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