映画 ”おおかみこどもの雨と雪” レビュー
(製作:スタジオ地図・おおかみこどもの雨と雪製作委員会 2012年 118分/おおかみおとこ=父親:彼、人間の母親:花、おおかみこどもの姉:雪、同弟:雨)
今日(2012年8月4日)は横須賀の日米(海軍)基地同時開放の日(サマーフェスタとフレンドシップデー)でしたが(昨年・2011年の様子ならこちら)、今年はあまりに暑くて死にそうなので、横須賀には行かず、歩いて行ける映画館で「おおかみこどもの雨と雪」を観ました。
※「おおかみこどもの雨と雪」予告編(予告編3でサムネイルになっていたのが、移動図書館で雪がおおかみこどもの姿で本を借りようとするシーン。いいですねえ、これ)…予告編3は非公開になったので、これは予告編の2
淡々とした描写が続きますが、いい映画でした。ちょっと似たタイプの映画が思い浮かばない今までにない感じの内容です。映像も細田守監督らしく、アニメの「時をかける少女」でも見られた細部と情感にこだわった作画表現が美しかったです。
都会と里山の生活風景もよく描けています(私も両方で暮らしたことがあるので。瀬戸内出身なので富山の雪深い冬までは知りませんが)。雨と雪が駆けまわるところや、駄々をこねたりするところも違和感なかった(うちの近所はやたらに子供が多く、大型スーパーのフードコートなどに行くと、”雨と雪”に勝るとも劣らないうるさいガキども…いや元気溌剌・明朗闊達・天真爛漫で無邪気な幼児・児童らお子様たちが大勢走り回っております。外の道路でもこの調子の子供がいるから実は不安)です。
参考記事 : 迷子(まいご)(2012.2/21)
この映画を手短に説明すると、「なんでも独りで抱え込む苦労性のヤング・シングル・マザーとアイデンティティに悩む子供たちの成長記録」。
「おおかみおとこ・こども」の話だから、ファンタジーとして見ていられるが、これが「国際結婚夫婦や移民の親と国籍や文化の問題に悩む子供たち」という設定だったら、現実に多数存在する問題で、考えさせられる話です。
勉強家で努力家の花さんですが、なんでも”答”や”正解”が本に書いてあるわけではないし、悩みをなにもかも独りで抱え込むのもよくありませんね。いろんな意味で。韮崎のじいさんの言うとおりですよ(私は「笑うな」とまでは言いませんが)。
反省する心は大事でしょうが、自分を責めてばかりいるのも感心しないです。
家にこもって悩んでないで、家族で四国88箇所を巡るのも手だったかも。この家族のお遍路物語だったら面白いロードムービーができそうな気がします(無料お接待を気軽にしてもらえる半面、四国では”自分を責める”タイプの人間があまりいなくてカルチャーショックを受けたりして。フフフ…^o^ )。
*2012年8月22日追記・主に香川の人向け : 登場人物の内、雪の同級生の「草平」くんの声を演じている平岡拓真くんは高松市出身だそうです。
*高松市出身の子役俳優・平岡拓真君が来社(四国新聞 2012.8/21)
もっとも舞台の富山県上市町は細田監督の出身地だそうで、四国が出てくる余地はないけれど、”隠れ住む親子を受け入れる田舎の里”って(というか、棚田のシーンで)、「八日目の蝉」の小豆島を連想します。
ロードムービーといえば、今月(2012年8月)25日には”高倉健”さんの6年ぶりの主演映画「あなたへ」が公開されます。こちらも期待大です。
それから、以下「もし」を3つ。
その1) もし、舞台が日本でなくアメリカだったりしたら、軍と科学者のスペシャルチームが”オオカミ人間”を捕獲しにやってきて、”軍部 VS オオカミ子供を守る母と市民”(「炎の少女チャーリー」みたいな)か、「ウルヴァリンX-MEN ZERO」のような壮絶な話になってしまうかも。
「となりのトトロ」の時も思ったが、アメリカで人里近い森にあんな”怪物”がいたら、すぐに銃で武装した”自警団”が「町の住民を怪物から守る」という名目で結成されて、山狩りが始まるんじゃないかと思う(「ランボー」の1作目みたいに)。悪意はないにしても「自分たちは自分で守る」意識が過剰になると、恐るべき攻撃性があらわになる可能性なしとしません。
アメリカでなくても(イギリスや日本でも)、「ケモノが人を襲った」ということになると「狼男アメリカン」(狼男がアメリカ人で舞台はロンドン)のような展開になる可能性大です。実際最近の日本では熊が里で人を襲ったあげく、射殺される事件が増えてますし。
その2) もし、花さんが戦争に巻き込まれたら、宮崎駿監督の「風の谷のナウシカ」(のコミック版)のように赤子を抱えて(ナウシカの場合は戦災孤児)、断固生き抜くドラマになるんだろうか…(ホントは”おおかみこどもの~”ポスターを見て一番最初に連想したのがこれ)。
その3) また、もし、私が都会でこの家族の近所にいたら、子供の方が心配で、児童相談所に通報するかもしれないし、田舎で近所なら、野菜を持って行ったり、何がしか理由をつけて覗きに行くかも。この場合も心配なのは子供の成長の方ですが。「まともな仕事なしでどうやって子供を育てるんですか?オバサン!」ということです。そういう意味では、私は名無しの脇役の皆様とあまり変わらないのだが、悪意があるわけではない。悪意のある人がゼロであっても悲劇は起きるのです、と思う。
「おおかみおとこ」があまりにあっけなく死んでしまったのが、見ている方にはやや物足りなかったし、世間から隠れて生きるのが目的なら大都会の方が向いているのにと思いましたが、里山に引っ越した花さんの選択は結果的に良かったのかも知れません。
自分の子供と一緒に家族で見る映画かというと、実はちょっとちがう(アメリカなら、特に前半部分でPG-12かも。ナウシカのコミック版の方も凄惨な場面が多い)が、大人が見るファンタジーだと思います。
(コミック版ナウシカの”戦場の人たち”を私は気に入っております)
ところで、「半妖」の「犬夜叉」は、おおかみおとこさんの親戚ですか?え、こっちはニホンオオカミだから関係ない? 失礼しました…。(^_^;)
押井守監督のアニメ「人狼」は全然相関ないです(奇しくも同じ”守”さんですが)。
さらに全然関係ないが、私は耳を両方とも任意に動かすことが出来るんだよ。だからどうしたといわれても困るが、ほとんどの人にはできないはずですねん。散髪屋さんが迷惑するだけで、何の役にも立たない特技ですが。
ちなみに今回も細田作品”お約束”の”少女の号泣シーン”があります。私的には「泣いてばかりいても…」イマイチ…かな? 「時かけ」の「真琴」の時は心を揺さぶられたものですが(これも泣いているところ自体より、振り返った時に「誰もいなかった」シーンの方です)。(^_^)
(「時かけ」の場合は本人(真琴)主役で本人のナレーションで話が進行するので、主役の少女に自動的に感情移入するわけですが、「サマーウォーズ」では男の「僕」(健二)が主役でナレーションも彼で、彼の立場から泣く彼女(夏希)を見る形。「おおかみこども」ではナレーションは娘(雪)で、主役はその母(花)。それで、娘が号泣しているのは回顧的な流れになるので、観客としては第三者的・客観的な見方になってしまう。こういうわけで、同じ「少女の号泣シーン」でも感じる度合いに、私は、差が出たのでした)
※「サマーウォーズ」予告編
※「時をかける少女」予告編
平家の落人村(隠れ里)みたいな、おおかみびと一族の隠れ里が”発見”されれば、シリーズ化できるかも。コロボックルの話なら「だれも知らない小さな国」という名作シリーズがありますし。
おおかみおとこの”彼”はローン・ウルフ(一匹狼)でしたが、狼(オオカミ)は本来は群れで行動する生き物なので、生き残っているなら集団である可能性の方が高いのでは。
絶滅したはずの本物のニホンオオカミがまた発見されれば、さらに大ニュース。東京海洋大学准教授”さかなクン”が絶滅したはずの淡水魚「クニマス」を発見した例もあるので、こっちも夢がなくはない話です。
*さかなクン「感動伝えたい」 絶滅魚確認に貢献(47NEWS/共同通信 2010.12/24)
※直接は関係ないですが、滅びゆく先住民の部族とその部族の娘と結ばれる白人将校、それにオオカミが出てきたストーリーで、なんとなく連想して思い出したのが、ケビン・コスナー監督・主演の「ダンス・ウイズ・ウルブス」。
おおかみおとこさんには、もっと長生きして「ラスト・オブ・モヒカン」(ちなみにモヒカン=マヒカンは狼の意味だとか)のように活躍して欲しかったですが、それでは主役もお話のテーマも変わってしまいますね・・・。(^^ゞ
なお、実際にはモヒカン族は滅びてはいません。念のため。
*以下にも参加しています。
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