宇宙戦艦ヤマト2199・第11話「いつか見た世界」がテレビでも放映されました(MBS・TBS系列 2013.6/16)。
アニメとしての演出的なことはさておいて(私には良かったですよ)、内容的にはいろいろ考えさせられるものでした。
地球社会の内部では秘密にされていて、軍人には緘口令がしかれているが、実はガミラスと地球の艦隊がファースト・コンタクトした時に「地球側が最初に攻撃した事実」と、それを口にする乗組員の場面があり、それに、女性クルーの入浴シーンもありました(あの立派な浴室は「トップをねらえ!」からのイメージかな ^o^ )。他の回ではガミラスや地球内部・ヤマト内部の権力闘争や反政府活動、勢力争いなども出てきます。
「今の日本」では別にさして驚くほどの表現ではありませんが、某政党などの「国家秩序最優先」で、国民の権利条文にやたらと「制限条項」を付け足してばかりいる憲法草案や、アニメや小説などの「表現規制」が盛り込まれた児童ポルノ規制法などが成立すれば、今回の話はアノ場面もこのシーンもダメダメと、放送不可にもなりかねない内容なのです(これで、同じ政党や官公庁が”クール・ジャパン”な日本アニメを海外に積極輸出したいというのだから、センスというか正気を疑いますな)。
作中内で沖田艦長が紹介していた「過去に眼を閉ざす者は、未来に対してもやはり盲目となる」は、リヒャルト・フォン・ヴァイツゼッカー元ドイツ連邦共和国大統領の演説の一節です。
この演説は大学の時にドイツ語の先生が教材に使ったので私も知っていたわけですが、戦前戦中の日本の言論統制の過酷さ(今の中国も同じ)を無視して、いたずらに過去を美化するような最近の一部の考えには賛成できません。
自虐史観を裏返しただけ、振り回している旗の色が違うだけで、本質的にもレベル的にも、実は同じだろうと思います。
先日、サッカー・ワールドカップ予選の際、渋谷交差点で騒ぐファンを絶妙なトークで誘導した”DJポリス”が表彰されたり、今では自衛隊もオープンな広報に努めています。
が、このような権力を象徴する武装実働部隊を持つ官公庁が国民に対してサービス姿勢を示し、その現場の努力が評価されるのも、現憲法が自由や人権を保証していればこそ。戦前の日本や現代でも他の強権的な国家なら、警察や軍が“民衆サービス”なんて、“軟弱”の一言で葬られ、現場はいつも血みどろ状態です。
国家の武装部隊が”権力の暴力装置”になるか”法に基づく実力組織”になるかは憲法と国民次第です。
強権的な国ではデモ隊や群衆は、機動隊や軍隊がすぐに強制排除することになります。非西洋の民主・自由主義国家として日本と並ぶトルコですら、現在そうなのですから。
*DJポリスに警視総監賞授与 人混み警備では初(2013.6/13 47NEWS/共同通信)
*トルコ、反政府デモ隊を強制排除 衝突続く(2013.6/16 47NEWS/共同通信)
スターリン式をとるかヒトラー式をとるか、そんな”究極の選択”をするのはまっぴらです(ギレン式かデスラー式かでも困るな…)。
”クール・ジャパン”な作品が今後も誕生し続けてもらうためにも、極端な考えが支配するような社会になることは防ぎたいものです。
*宇宙戦艦ヤマト2199 PV(プロモーション・ビデオ)集のページ
*関連記事 :
・新作ヤマト2199はなかなかいい。(2013.4/14)
・本は焼かずに読むものです。(2013.5/4)
・進化する自衛隊のサイト(2013.4/28)
…そういえば、今回の作中で「政府公報」のニュース映画が出てきましたが、日本国の「政府広報」のことならイヤというほど大変よく存じておりますよ。フフフ…(^_^);
それにそうそういるいる。あのエラそうな「軍務局長」みたいなヤツ。役人にも、天下りにも。自分の国も役所も天下り先も滅ぼすタイプ(断言、というより既に起きた事実。私は見た、ですわ)。 (-_-メ)
・おまけ
まだ先ですが、ドメル艦隊とヤマトが七色星団で決戦する話のPVを見ていると、やたらに「彼らは来た」のセリフが・・・。元ネタはこの本か?
ノルマンディ上陸作戦をドイツ側から描いたドキュメント。一見戦争に強そうな全体主義国がなぜ結局は負けるのか、分かりそうな気がします。要は”硬直した統制体制は変わりゆく状況に柔軟に対応できない”から、でしょう。
民主国家ならば、あらゆる立場の人が毎日毎日変化に対応しながら世間や組織を運営してるのだから、実は当然の結果かな。戦争は競技会じゃないですからね。あらゆる意味で。
それに、独立した個々人や国が協力して集まるから「連帯」や「団結」、「絆」に意味が出てくるんであって、「無個性」の「ロボットモドキ」がいくらいたって、「その他大勢の集団」にすぎない。個性(と言えるかどうか疑問だが)があるのはほとんど無法者集団のトップだけで(日本の場合トップも無個性なことがある。恐るべき官僚教育とエスカレーター人事です。だから戦争指導も”お役所仕事”)、これでは犠牲数無視の人海戦術以外は勝ちようがないです。逆に敵側からすると、作戦や思考パターンが単純で読みやすいから、振り回しやすいということになります。
個性のない人間は何もかも他人ごとで、強制しない限り、何をしてもやらさせても「相互協力」することはまず無いですよね。帝国陸海軍のように。あるいは大陸中国のお役所のように。第2次世界大戦時における日本の軍部や政府内の仲の悪さとセクショナリズム、官僚主義、内戦一歩手前の状況は、日露戦争時のロシア帝国末期の政府・軍部内の仲の悪さと革命前夜の状況を彷彿とさせるのですよ。
日本人として不愉快だから、こういう比較はあまりされませんが、「負ける側」の状況は他の戦争でも同様なパターンが多いです。「城内平和」のために外国を攻めても、まず自滅するのが相場(敵にも見透かされていて内部不和を利用されるのが普通)。
ちなみに、日露戦争時、ロシアの革命勢力に資金や武器を援助してツァー(皇帝)の政府に揺さぶりをかけていたのが日本陸軍の明石元二郎大佐。で、日本は後にスターリンのソ連のゾルゲにしてやられることになります。「太平洋戦争で日本はコミンテルンに騙された…」とか、一部事実でしょうけど、世界から(先人が間抜けだったと自分で宣伝するのか?と)笑われるだけ。テレビドラマや映画と違って歴史はずっと連続しています。
日本も、(外国のプロパガンダを鵜呑みにする訳にはいかないが)負けた戦争の負け惜しみや言い訳をいくらしたって前向きなことは何もありません。
”自由から逃走”し、社会の個々人が自分の頭で考えることをやめた時点で、戦争は負け!です。
そういえば、「宇宙戦艦ヤマト」も実写ヤマトのお手本(?)の「宇宙空母ギャラクティカ」も、戦争に負けて逃げまわる人類のお話。日本が今、イメージの良さ世界一(米TIME誌や英BBCの調査による)として、愛される国になっているのも負けを知っているからでは。
*親切、清潔、安全性…国家イメージ世界一!世界が噂する「日本の評判」(Web R25 2013.6/6)
参考記事 : ・映画「SPACE BATTLESHIP ヤマト」(実写版)レビュー(2010.12/1)
※↓この本で、当時陸軍の下級将校だった山本七平氏が直接見た、敗戦直後の捕虜収容所でお互いに「閣下」と呼び合って談笑する将軍たちの無責任ぶりは、現代の原発事故の国の責任者らの姿とピッタリ重なって、慄然とするものがあります。
徳川家康は「勝つことばかり知りて、負ける事を知らざれば其の害身に至る」と言ってますが、そのとおりでしょうね(「イヤ、あれは負けてない」と言い張るのも同じでしょ)。
*以下にも参加しています。
どこぞの”憲法草案”作ってる大センセイより、この「2199」シリーズの方が、よほどバランス感覚がある。あの”草案”とやらは、まるで”人民憲法”
か”大ガミラス帝星憲法”、いや今頃になって占領からの独立を目指す”ジオン憲法”かな? で、一方では、ヤマトやガンダムみたいな”クール・ジャパン”
のアニメを海外に積極輸出したいと? いやはや、「秩序こそ命」の大センセイ、”ジオン憲法”下ではクールな作品は絶対に誕生しませんのでね…お呼びじゃ
ないよ。実際に中国のプロパガンダ臭い官製アニメなんかつまらないでしょ?・・・そもそも自分で自分を「クール」というのは「手前味噌」「自画自賛」に
なって「クール」じゃないし、戦後日本のマンガ・アニメの元祖・原点である手塚治虫さんや石ノ森章太郎さん(ふたりともバリバリの”戦中(苦労人)派”が
存命していたら、「政府主導の文化輸出」に賛同すると思いますか?
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