BR : 「空海」の著作入門三部作
<Book Review : ブック・レビュー>
讃岐の生んだウルトラ・スーパー・スターの弘法大師・空海ですが、“空海関連”の書籍は汗牛充棟、数知れずあれど、本人の著作をわかりやすく解説したものは、実はそれほど多くありません(もちろん専門書は別です)。
本人の生涯が波瀾万丈なので、足跡を追うだけで十分興味深いですし、そもそも密教というのは、お釈迦様の教えが明らかにされ、書物などで表現可能な顕教に対するものなのだから、その著作が難解なのは無理もないこと(理屈で考えるのではない、体感するのだ!という感じ。スター・ウォーズのジェダイみたい)。
とはいえ、やはり、一応地元出身者として、何か入門書ぐらいは読んでおきたいということで探しておりましたら、値段も手頃なものがありましたのでご紹介です。
いずれも加藤精一大正大学名誉教授の訳・編による「角川ソフィア文庫・ビギナーズ日本の思想」から出ている本で、
書名・価格は、
・「空海 三教指帰」(くうかい さんごうしいき) 667円+税
・「空海 秘蔵宝鑰」(くうかい ひぞうほうやく) 819円+税
・「空海 般若心経秘鍵」(くうかい はんにゃしんぎょうひけん) 629円+税
…の3冊です。
現代語訳・解説と読み下し文が掲載され、ありがたいことに全文ルビ(読みがな)付きです。
※角川ソフィア文庫シリーズ↓。
(会社の住所は変わってます)
「三教指帰」は、空海が若いころ(24歳)に書いた処女作。儒教・道教・仏教を比較して、仏教が一番優れていると確信したことを戯曲形式で書いた書。三幕一場の日本最初の戯曲と言われているそうです。
「秘蔵宝鑰」は空海57歳ごろの書で、自らの思想体系をまとめたもの。序文にある「生れ生れ生れ生れて生(しょう)の始めに暗く、死に死に死に死に死んで死の終わりに冥(くら)し」は(映画のパンフレットでも紹介されていて)非常に有名です。
「般若心経秘鍵」は、一冊にまとまった「聖書」を持たない(大乗)仏教のエッセンスが集約されているといわれる「般若心経」を、密教の立場から空海が解説したもの(一般的な解釈と違う部分もあるので、他の解説書も併せて読んだ方がよいと、本の紹介ではよく言われています)。空海入定間近い61歳の書。冒頭近くの「それ仏法ははるかにあらず、心中にして即ち近し。(仏陀の悟りは各自の心の中にある)」に本書の精神が要約されているのかも知れません。
そういうわけで、お盆も近いですし、空海ファンは、夏休みにまとめて読んでおくのもいいかもしれません。
関連記事 : BR:「三教指帰」(さんごうしいき) (2011.1/25)
※併せて読みたい(?) 本も。
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