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2015年4月 2日 (木)

英語と日本語の世界観の違い… 「日本人のための英語学習法 」

何年勉強しても一向に(私は)上達しない英語。勉強不足の件は脇に置いといて、やはり、日頃から漠然と感じる「日本語と英語の本質的な(世界観・思考様式)の違い」。それを、明快に解説してくれる本を(たまたま)見つけたので、ご紹介です。

日本人のための英語学習法 (講談社学術文庫):720円+税
日本人のための英語学習法 (講談社学術文庫)

中身の主な点を挙げてみると・・・

・すべての現象を日本語は「コト(事)」、英語は「モノ(物)」と捉える。

・故に、英語は簡単に名詞が動詞化したり、動詞が名詞化する。

・日本語の動詞は、初めから「誰か・何か」が行うものと決まっていて、だからこそ主語の省略も可能だが、英語の動詞は、あくまで、それ単体で存在。従って、主語や目的語をつけて、正しい語順で並べないと文としては成立しない。

・前置詞の使い分けイメージ。

・英語では、まず「私・I」があり、この主体が周囲の世界を認識していくのに対し、日本語では、あくまで相手・周囲との関係性の中で自分を捉えるので、一人称も二人称も状況によって変化し、自己主張も強くなりにくい、などなど。

I have no money. とか、「ないカネを持っている」って、なんじゃらほいと、以前はよく思いましたが、この本の解説を読んで、少し分かったような気がしました。

(「おカネがない」は日本語では「コト(状態)」、英語の「no money」は「モノ(存在?)」と考える)

また、英語(インド・ヨーロパ語)と日本語(なお、東アジアの言語はご近所でも違いが大きいですね)の「自分」の捉え方の違いは、文化や思考様式の違いに関係する話で興味深かったです。

書名は「英語学習法」ですが、内容は「比較言語(文法)学」みたいな感じで、分量も180頁あまりの文庫なので気軽に読めます。

英語の思考方法にもやもやと疑問を感じる方には面白いのではないかと思います。ご参考まで。

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…もっとも、「だから欧米人は個人主義」で「日本人は和を重んずる集団主義」ということまで話が行ってしまうと、一面的な見方に過ぎるとも思います(中国は民主的ではないけど、中国人は超個人主義。ドイツ人やロシア人は個人主義的ではなさそうですが、すごく思索的あるいは議論好き。それに、英語の本場の英国社会って“個人主義”なんですかね?)。

日本語は使いこなせれば便利な言葉で、京都人の様に婉曲表現ばかりで話すこともできるし、大阪人のように直裁的に話すことも、格式張ったお役所言葉だけで文を構成することも可能。英語を語順通りに直訳しても、「てにをは」を工夫すれば、どうにか文に出来ます。言葉と文化の相互の影響は、重要ではありますが、それだけではないように思います。

また、「私」が強い文化では、たいがいは他の一般人を上回る強い自我を持った「カリスマ・リーダー」「ビッグ・ボス」「独裁者」「個人崇拝」もまた出現しやすく、こうなると、「個人主義」もすぐ消えて、「忠誠/loyalty」ばかり求められる社会になる。英語で「上司」はもろに「BOSS」ですし。

(以前はやった「日本人論」では、西洋などがリーダーシップの強い「騎馬民族型」で、日本は調和型の「農耕民族型」といってましたね)

一方、実は特定の個人を崇拝するのは嫌い(組織のトップも個人名ではなく一般的肩書などで呼びたがる)で、相互の関係性を重視する日本社会では、「ワンマン」な独裁者はめったに出ないし、平等指向も強いが、内輪の「和」や「帰属意識」を重視するあまり、「同質主義」「同調圧力」が集団内で強まって、少数意見を押しつぶしたあげく「集団自殺」的行為に走りやすい。

どちらも一長一短あるわけで、この特質(長所・短所)を自覚した上で(イジメはどこででも起きるが、それにどう対処するかが問題)、短所が肥大化しないような持続的な社会の努力が必要だろうと思います。

実際、日本人は「建前では控えめ」ですが「本音はプライドも競争心も人一倍強い」のが実相。また、かつて山本七平氏がよく指摘されていましたが「日本人が最も信用しない人間は、神や仏を信じない人などではなく、“自分が信じられなくなった”と言う人物」。「オレを番号で呼ぶな」とか「それで君の意見はどうなんだ?」とかも日本人お気に入りのセリフ。「大衆」でくくられるのも、「金魚のフン」「腰巾着」的人物も、普通の日本人は嫌います。

これで日本人を、自我や個人の意志が弱い国民と断ずるのは、ちと早計ではないかと思います。これこそ「現代(近代か?)の神話/都市伝説」かも。

「サムライ」に「あなたは自己の意志が弱い」などと言ったら怒るでしょうしね。

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