重力波より「うどん値上げ」ニュース…地元紙の役割
ツイッターでは、もちろん当日に盛り上がっていましたが、こちらは日遅れの追いかけ紹介。
世界中の新聞の一面トップを「重力波を初観測」という、ノーベル賞級の科学ニュースが飾った2016年2月12日、わが地元のうどん県(香川県)の地元新聞・四国新聞では、重力波ニュースは1面ではありましたが左肩に。トップは「県内うどん店であいついで値上げがあった」という記事でした。
*さすがうどん県 「四国新聞」朝刊トップが重力波でも円急騰でもなく「うどんの価格上昇」でTwitter民うなずく ノーベル賞級の功績よりも日本経済よりも、うどんが大事。(ねとらぼ 2016.2/12)
四国新聞(四国・香川県の地方紙)は、ホームページに、「うどん」専門コーナーがあったり、「早明浦ダムの貯水率」が(水不足に備えるため)常時表示されていたり、ご当地色の強さでよく話題になりますが、今回もその面目躍如といったところ。
もっとも、「ねとらぼ」の記事の副題にあるように「ノーベル賞級の功績よりも日本経済よりも、うどんが大事」というふうに県外の方々に思われるのは、ちょっといただけない。
「重力波ニュース」が完全スルーされているならともかく、ちゃんと一面にはあるし、地元紙なら、地元ニュースが優先なのは当然。また、「うどん値上げ」の理由が、「うどん店が消費税増税の負担に耐えられなくなったから」ということなので、まさに、日本経済や政府の政策が、地方の食生活と直結していることを示してもいます。
(ついでに紹介すると、地方紙では全国・海外ニュースは主に、共同通信社の配信記事が多いわけですが、「重力波」のような(共同の)科学ニュースは、なかなか分かりやすくて一般全国紙よりも、読み甲斐があることが多い)
(主な通信社には、他に時事通信社があります。また、報道写真のデータベースでは時事通信フォトが有名)
さらに、現在、うどん用の小麦は大半がオーストラリアからの輸入なので、「円高・円安」や「異常気象(豪州の旱魃)」も、うどん価格に直結します(一方で、讃岐産の小麦の開発も続いている)。
関連記事 : 讃岐うどんから見た世の中。(2011.6/2)
ちなみに、週刊東洋経済の2016.2/13日号(リンク先は目次のPDF)によると、「うどん県(それだけじゃない香川県)」のキャンペーンでは、その仕掛け人の方(PR会社㈱TMオフィス代表・殿村美樹氏。「うどん県」の他、「今年の漢字」「ひこにゃん」「佐世保バーガー」のPR戦略などを手がける)には大変な人生ドラマがあったようで、驚かされました。
今後、TPP条約が発効すれば、うどんにかぎらず、米や肉類をはじめ、他の食料品や農産物、各種地元産業にも大きな影響が出るでしょう。全国の地元メディアの皆さんは、日本全体や世界の動きと地元の関わりを分かりやすく伝えるよう頑張ってほしいものです。
*地方紙での最近の大きな地元関連ネタをもうひとつ。
指揮者の小澤征爾さんが2016年2月15日、第58回グラミー賞の「最優秀オペラ録音部門」で受賞されましたが、受賞作品は2013年に松本市の音楽祭「サイトウ・キネン・フェスティバル松本(現セイジ・オザワ松本フェスティバル)」で指揮・収録されたオペラ「こどもと魔法」だったので、長野県の地元紙「信濃毎日新聞」では号外が出ました。
*小澤征爾さんグラミー賞 SKF「こどもと魔法」(信濃毎日新聞 2016.2/16 「長野県のニュース」)
*小澤征爾さんグラミー賞(信濃毎日新聞 号外 2016.2/16 リンク先はPDF)
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***なお、政治がらみだと”ニュースのスルー”は、どこの新聞でも散見されます。「客観報道」といいつつ「読者を誘導」するような記事があるから、最近のメディアは批判されることが多いのでしょう。「社としての意見」は「社説」で、「事実」の報道は「記事」で、住み分けをできるかぎり明確にしてもらいたいですね。また、日本のメディアは基本、日本人しか読者・視聴者としていないので、国際機関や国際会議、アメリカ議会の公聴会などで日本マターが出た時だけ大々的に報道する傾向が強いです。すると、実は「世界中に数ある問題の一つとして取り上げられたもの」であっても、日本人は「また狙い撃ちにされた」と感 じて、外国への無用な反発を惹起することがあります。こういうところは、池上彰さんのように、きちんと背景説明や解説付きの報道をしてもらいたいものです***
ちなみに、全国紙・ブロック紙・地方紙・地域紙・郷土紙(&スポーツ紙)などの一般(向け)紙の他、各業界などの業界紙・専門紙というのもたくさんあります。
雑誌関係はこちら。
こちらは、アメリカの新聞博物館(ニュージアム)のサイト。世界中の新聞の1面などが見られます。
*「雑誌・新聞総かたろぐ」というのもある→メディア・リサーチ・センターのHP
*以下にも参加しています。
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コメント
アルベルト・アインシュタインさんの予測から100年後にアメリカのLIGOの重力波初検出のニュースがあった時は「やった!」と思い、祝杯をあげました。
後日にこの四国新聞の記事の写真を見た時は「おお、重力波初検出とかけうどん値上げがトップに並んで出てる!でも、重力波のスペースよりもうどんのスペースが大きいぞ!」「流石は県民がうどんをソウル・フードにしている香川県だなw」と思いましたね。
いや~、今見てもインパクトがありますよ。この紙面。
ちなみに初検出の重力波はブラックホール連星の衝突のもので、2つのブラックホールの質量はそれぞれ太陽質量の36倍と29倍で、合体の瞬間に太陽質量の3倍の質量がエネルギーに転換されて(←有名なE=mc2)重力波として放出されています。
うどんといえば、肉うどんかカレーうどんが食べたくなってきたぞ。。
投稿: tau_neutrino | 2018年2月18日 (日) 00時17分
コメントありがとうございます。
重力波検出のニュースは世界的ニュースですが、うどんの価格も税制や輸入小麦価格に直撃されるので、結構、日本全体や世界経済と連動したニュース。地方と世界のつながりがニュースになる地方紙の特色が出ていて面白かったです。
投稿: cocobravo | 2018年2月18日 (日) 00時59分