カテゴリー「ブックレビュー」の20件の記事

2025年10月10日 (金)

置き去りなし!「だれでも防災」

日本は災害の多い国です。地震・火山噴火・津波・台風・集中豪雨・土砂崩れ・高潮・河川氾濫・洪水・竜巻・熱波・寒波・豪雪・熊などの獣害、また原発や工場の事故にテロ、そして感染病のパンデミックなどなど、砂漠化以外の殆ど全部の天災・人災が起きます。現代においては、幸いにして、経済社会が安定し、治安自体は良好ですが、かわりに少子高齢化が進展しています。

こうした状況ではありますが、日本では災害があまりにも多いために、被災者が我慢するのは当たり前だという風潮が根強く残り、トイレも水も不足した、不衛生でプライバシーのない避難所で何ヶ月も過ごすという状況がいつも見られます。結果、高齢者や持病の有る方が災害関連死でなくなり、女性や子供が犯罪に巻き込まれる事例が後を絶たず、諸外国の被災者支援態勢に比べても遅れを取り、国際的にも問題視されるようになってきました。

こうした状況を改善するために大いに参考になりそうなのが本書「だれでも防災」で、要するに、高齢者・病気の人・子供・女性・外国人などなど、いわゆる「災害弱者」と言われてきた人々をメインの対象にした防災対策が紹介されています。

だれでも防災 決定版 避難が難しい人のための一冊 鍵屋 一

「だれでも防災 決定版 避難が難しい人のための一冊 鍵屋 一」(中央法規出版)

いまや日本は既に超高齢化社会であって、被災者は高齢者の方が多数派になる時代ですから、「災害弱者」の方を「標準」として、「非常時だから我慢」でなく「非常時だからこそしっかり支援」すべきです。当然ながら、この方が成人健常者も快適だし、被災者の社会復帰、ひいては災害後の経済復旧・復興も早く進みます。企業のBCP(非常時の事業継続計画)同様、社会全体でもこうした体制を整え、社会全体で発想の転換が必要な時期です。その分かりやすい参考書になりそうな内容です。

石破総理の退陣で「防災庁」がどうなっていくかわかりませんが、日本政府もようやく2024年から、災害時の避難所の設置基準(ガイドライン)に「スフィア基準」(「人道憲章と人道対応に関する最低基準」)を採用を決定したとのこと。昨今、災害はますます激甚化していますから、日頃の備えはますます重要です。備えましょう、常に。平時の余裕のある時から。

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2024年11月 1日 (金)

法の世界史総まとめ「法の歴史大図鑑 世界を知る新しい教科書」

法律の世界史を知るのに面白い本「法の歴史大図鑑 世界を知る新しい教科書」(河出書房新社 4980円+税)という図鑑がでていました。

古代から中世、近代、現代まで世界の法律の態様と発展の様子が紹介されていて、世界の主要な法体系の発展がわかりやすくまとめられていてるので、世界の法制史を俯瞰するのに非常に適している気がします。

法の歴史大図鑑 世界を知る新しい教科書 ポール・ミッチェル

「法の歴史大図鑑 世界を知る新しい教科書 ポール・ミッチェル」

【「法」を知るための画期的な図鑑、誕生!】社会を生きる私たちに必須の「法」が分かりやすい入門図鑑に。『法の歴史大図鑑』、10月17日発売。(PR TIMES/河出書房新社 2024.10/9)

日本人にとって興味深いことに、日本の事例も載っているのですが、それは「法の支配の台頭」の章の明治天皇の「五箇条の御誓文。日本におけるアジア初の立憲政治とか議会政治はこの御誓文からはじまっていて、開明君主としての明治天皇の功績としてアメリカなど海外の教科書にのっているのもこれです。一部の懐古趣味の方々が好きな「教育勅語」の方じゃありません。

後者の方は、結局のところ人治主義であるところの儒教政治の教えなのであって、なにか「いいこと」がいくら書いてあっても、(人治を旨とするなら建前上当然「人としての徳目」が並ぶでしょう。ただし、これは国を治める権力側から見て都合の良い内容だけ。当然でしょう。そもそも単に「いいこと」なら大概の宗教書や古典には必ず書いてある。そのどれかを特別に国が採用して暗記を強制するなど、思想統制の最たるものです。ちなみに日本の一部の方も大好きな、団結と愛国がやたらに強調されるのが実は「アメリカ」。しかし、同時に連邦政府を暴走させないための市民の武装・抵抗権も保障されていて、それが銃の所持の権利。ガン・コントロールが簡単でないのはこういう理由です。アメリカは自由の国というより、団結と抵抗の国。この国のマネなんて日本人には無理でしょうね。ちなみに、大富豪が世界一多いのもアメリカだが、労組が世界一強い国もアメリカです。United Statesの国民・市民・職業人はUnionも大好きです)、立憲政治を(法の支配どころか単純な法治主義ですら)根本から破壊してしまう内容で、実際にそうなり、明治憲法の制度上の不備(内閣の規定もないし軍の統帥権が別立てだし国家は無答責。もっとも19世紀の政治制度はどこの国もそんなもの)も相まって大日本帝国の政治制度は機能不全に陥って、軍部官僚が国を乗っ取り(議会が大政翼賛会になり、臨時軍事費が無制限に支出できるようになって)、世界を敵に回して大戦争をやった挙げ句に破滅してしまいました(おかげで終戦直後はハイパーインフレになり、戦時国債は紙切れに)。

(※この敗戦によっても、他の敗戦を経験した国の皇帝や王家と違って、我が国の天皇は生き残り、今でも世界唯一の「エンペラー」なわけですが、そうは言っても海外のお金持ちな王族と違って、その財産は全て国会の管理下にあり、制度上、憲法8条と88条によって皇族が自分で自由にできるお金は原則1円もないのです。ご苦労様なことです。また事実上国に召し上げられた皇族や旧華族の土地が払い下げられて建っているのがプリンスホテル)

そもそも、儒教倫理そのままの教育勅語が好きだというのでは、「同志国」は「自由と民主主義と法の支配」を信ずる欧米ではなく、「東洋独自の政治文化」なるものを振り回す大陸中国になってしまいます(そのお隣の国で建前上採用されている共産主義は西欧発祥だし、国歌は西洋式マーチ、国号に使われている「人民」も「共和国」も、また、「共産」も「主義」も、明治の日本製漢語ですがね)。

明治維新を推進した武士たちはもともと朱子学などの教育を受けて育った攘夷派が主流。それが西欧列強の軍事力を目の当たりにして開国と欧米化に舵を切っただけだったので、制度は西洋式・心は儒教式になり、これでも19世紀当時は欧州でも君主国がたくさんあったから矛盾をあまり感じなかったのでしょうが、制度をうわべだけ真似るというのはもともと無理のある話だし、和魂洋才といっても、儒教は和魂じゃなくて中華魂ですしね。

あるいは、「教育勅語」制定当時の趣旨としては、いまだ「お殿様の家来・領民」意識の強い明治初期の全国の国民に「日本で唯一人の天子様の臣民」=「日本国民」だとの意識を植え付けたかったのかもしれません。これは軍隊も同様で「各藩の藩兵」が「天皇の軍隊」になったから「国軍」だという理屈だったようです。しかし、明治から大正・昭和ともなると世代も変わって「藩」意識は当初の目論見通り消えていきましたが、かわりに、なにかにつけ丸暗記式のエリートや国家主義者らが、天皇VS大名ではなく、天皇VS国民のごとく勘違いした解釈・思想を主張し始めて、また排外思想も強まり、一方では労働運動も激化して、左右の思想が激突して、今風に言えば社会は分断していました。

こういう状況で、やたらに政府や軍部から暗記を強制されてばかりで、つまるところは「天皇への忠誠のためなら法律も何も一切関係ない」ことばかりが強調されるに至った「教育勅語」が、戦後すぐに国会の全会一致で「廃止」決議されたのは当然の成り行きでしょう。ベトナム戦争帰還兵の「ランボー」同様「信じて戦って、無償の勤労奉仕もさんざんやったのに勝てなかった」。当時の国民自身がうんざりしていたということです。

NHKの朝ドラ虎に翼でも話題になった、戦後の新憲法下で違憲判決が出て刑法から削除された「尊属殺重罰規定」も、実のところ「道徳・倫理」が淵源ではなく、儒教の皇帝=親、臣民=子の思想が家庭に応用されて、親=皇帝、子=臣民だから、親殺しは国家反逆と同じ=刑罰は死刑か無期懲役のみで減刑なし、という理屈。こういう思想は、法の下の平等とは対極の考えでしょう。しかも、現実には、皮肉なことに肉親同士で相争う代表的事例といえば皇帝とか殿様とかも含むところの「王族」たちの権力争い。「道徳」などおよそ関係のない話ですね。

このほか、本書では1980年代以降顕著になってきた、いろいろな新しい権利(人権)に関する法律も紹介されていますが、人権といっても、だいたい20世紀末くらいまではどこの国でも(たとえ先進国であっても)、「国家権力(王様とか独裁者、行政機関)が国民の身体を勝手に拘束しないで、裁判を公正に行う(人身保護)」や「公的な言論の自由」ぐらいの話で、環境問題とか婚姻とかイジメとか、民間人同士の話なども人権問題と認識されて法制度に結びつき出したのはつい最近のこと。問題も複雑になってきたので、論点を整理・確認しておくにもこういう本は便利だと思います。

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2023年6月19日 (月)

一般人も利用可能な公開データ調査ガイド:「記者のためのオープンデータ活用ハンドブック」。

マスメディアの記者が記事を書く際には、関係者にいろいろ聞いて回るのはもちろんですが、それだけでなく、いろいろな下調べやデータ収集を行うことがよくあります。そのためのガイド本がでていて、値段も手頃で内容が分かりやすかったのでご紹介です。

記者のためのオープンデータ活用ハンドブック 熊田安伸

記者のためのオープンデータ活用ハンドブック 熊田安伸

「記者のためのオープンデータ活用ハンドブック」(熊田安伸著・公益財団法人 新聞通信調査会・700円+税)がそれで、情報公開請求しなくても、そもそも最初から公開されている行政の各種情報や入札案内、その他、登記、企業、雇用、事故、政治資金などなどの各種情報で一般に公開されていて誰でも利用できる情報の利用方法が紹介されています。ネット情報に関してはQRコードもついているので、ハンドブック片手に見たい情報にアクセスするにも便利です。

本来は取材記者用に作られた本ですが、一般にも販売されており、価格も手頃です。メディアの読者・視聴者は報道されたニュースを見ていろいろ判断することが多いわけですが、記者と同じ基礎データを調べられることは、仕事の上でも有益に活かせると思います。

本書や他の本で読んだところでは、スパイなど情報の世界の方々も、人間相手の情報収集活動(ヒューミント)はごく一部で、活動の大半は公開情報を分析すること(オシント)だそうで、大量の情報があふれる一方で、個人情報管理が厳しくなった現代社会のビジネスは、多くの分野で似た傾向が強いだろうと思います。

なお、同じ発行元から、「記者のための裁判記録閲覧ハンドブック」というのも出ていて、こちらは裁判記録の調査方法が解説されています。お値段はさらに安くて500円+税。法律に関連した書籍がどれもこれも高価なことを考えると、裁判報道や記録などに関心のある方にはお得なのではないかと思います。

記者のための裁判記録閲覧ハンドブック ほんとうの裁判公開プロジェクト

記者のための裁判記録閲覧ハンドブック ほんとうの裁判公開プロジェクト

いずれもご参考まで。

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2023年5月14日 (日)

民法大改正の時代に。「新しい民法がわかる本」。

「六法」(憲法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法)のうち、一般国民にもっとも身近な法律が民法。

我が国では憲法がもう70年以上も改正されていないとかよく話題になりますが(といっても、条文数自体が欧米の憲法に比べてざっくり半分ほど。だから解釈や運用をかなりしばしば変えている)、それをいえば、民法や刑法なども、基本、明治時代のものを100年以上の長きにわたって使っているのです。

もちろん、戦後に新憲法になったときに、新憲法の規定にそぐわない条文は改正(民法の家族法関係)、削除(刑法の一部)されたりしましたが、民法や刑法の大部分は、21世紀になるまで漢字・カタカナの文語体のままだったし、民法の財産法(物権・債権関係)などはほとんど改正されてきませんでした。

それが、21世紀に入り、民法の場合、2004年には条文が現代語化され、2017年には債権関係の大改正(2020年施行)が行われ、最近は成人年齢が引き下げられたり、児童虐待の問題から親の懲戒権規定が削除されたり、高齢化社会の進展で相続関連規定が見直されたり、空き家問題に対応して共有関係の規定が見直されたりと、昭和の頃には考えられないような大幅改正が続々と行われています。それも、ニュースでも常時話題になる生活に密着した分野ばかりです。

このような改正を逐一追いかけるのは非常に面倒なのですが、ここ20年ほどの改正をわかりやすくまとめた現状では最新(奥付では2023年4月20日発行)の本が出ていたのでご紹介です。

新しい民法がわかる本 全条文付 太田 雅幸

新しい民法がわかる本 全条文付 太田 雅幸

民法のポイントを103に分けて解説してあるほか、民法の主要改正時期と項目の一覧があり、巻末に民法の全条文もあって、価格も1500円+税と手頃です。

なお、必要か関心があって、購入する場合は、同名や似た名前の本が古いものも含めて他に何冊もあるのと、入門書・専門書ともに他にも良い本がたくさんありますので、その点はご注意ください。

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2015年4月29日 (水)

多様な「本のカタチ」の歴史…「世界を変えた100の本の歴史図鑑」

「本」の多様な5000年の歴史をビジュアルに紹介する本が出ていました。

世界を変えた100の本の歴史図鑑: 古代エジプトのパピルスから電子書籍まで
(原書房刊・A4変型判・288頁・本体価格3,800円+税)

ちと高価ですが、古代エジプトのパピルス文書から、世界最古の印刷物・日本の「百万塔陀羅尼」や平安絵巻なども紹介されていて、多様・多彩な「本のカタチ」の発展を知る上で非常に興味深いです。

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2015年4月21日 (火)

書評の大全だ!…「書評大全」

さて、一般の新聞においては、だいたい週1回以上、書評・新刊紹介の面がありますが、その「新聞」も、東京・大阪周辺以外の地域では、いわゆる全国紙や・中央紙ではなく、地元の地方紙やブロック紙の方がよく読まれています。その地元紙(やスポーツ紙など)に全国や海外ニュース、文化ニュース、そして、書評記事などを配信しているのが、加盟社で作る共同通信。同社が過去16年(1998~2014)にわたって配信した書評5000本を、なんと全て一冊にまとめた本が発行されました。

書評大全
(共同通信社編・三省堂書店刊 16,500円+税)

*「書評大全」について - 三省堂辞書サイト
*『書評大全』共同通信文化部編 5000のガチンコ勝負(47NEWS/共同通信 新刊レビュー 2015.4/20)

いったい誰が読みこなすことができるのか、という気もしますが、出版活動というのは、世相を知的な分野で表す鑑ですから、今後、20世紀末から21世紀初頭の日本について研究する人にとっては、きっと重要なメルクマールというかインデックスというか、重要な手がかりになるのではないかと思います。この偉業に敬服です。

・関連記事 : 新聞の書評欄とテレビの書評番組(2010.11/28)

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2015年4月13日 (月)

栄枯盛衰は帳簿とともに…「帳簿の世界史」

先日、「ボッティチェリとルネサンス  フィレンツェの富と美」(渋谷 Bunkamura ザ・ミュージアム 2015.3/21~6/28)を見に行ったのですが、そこで、数々の宗教画とともに、当時のフィレンツェでも活躍(?)していた「高利貸」(マリヌス・ファン・レイメルスヴァーレに基づく模写)の絵があって、宗教画との対比で妙に印象に残っていました。

※右端が「高利貸」。
Botticelli Bunkamura

それで、最近、そのレイメルスヴァーレ(オランダの画家)の別の絵(「収税人たち」)が表紙で、その高利貸しや徴税・金融・財務などなどの経済活動の土台となる「帳簿(簿記・決算書)」が歴史(各国の栄枯盛衰)で果たしてきた役割を解説した本が出ていました。

帳簿の世界史
(ジェイコブ・ソール著・村井章子訳 定価:本体1,950円+税)

私自身が帳簿関係は苦手だし、本書は主に欧米の事例についての解説(巻末に、編集部が「日本版特別付録 帳簿の日本史」を追加してくれています)なのですが、いくらトップが勇ましい美辞麗句を並べても、国や企業はじめ、組織や共同体の運営は、収支を無視しては続かないし、何より、この本は歴史の読み物としても面白そうなので、ご紹介です。

経済関係の新聞・出版社ではなく、文藝春秋の発行というのもユニークな感じです。

以下目次です。

■序 章 ルイ一六世はなぜ断頭台へ送られたのか

■第1章 帳簿はいかにして生まれたのか

■第2章 イタリア商人の「富と罰」

■第3章 新プラトン主義に敗れたメディチ家

■第4章 「太陽の沈まぬ国」が沈むとき

■第5章 オランダ黄金時代を作った複式簿記

■第6章 ブルボン朝最盛期を築いた冷酷な会計顧問

■第7章 英国首相ウォルポールの裏金工作

■第8章 名門ウェッジウッドを生んだ帳簿分析

■第9章 フランス絶対王政を丸裸にした財務長官

■第10章 会計の力を駆使したアメリカ建国の父たち

■第11章 鉄道が生んだ公認会計士

■第12章 『クリスマス・キャロル』に描かれた会計の二面性

■第13章 大恐慌とリーマン・ショックはなぜ防げなかったのか

■終 章 経済破綻は世界の金融システムに組み込まれている

■日本版特別付録 帳簿の日本史(編集部)

※さすがに、詳しい書評が「東洋経済オンライン」にありました。
→ *権力とは、財布を握っていることである 東京税理士会会長が読み解く「帳簿の世界史」(2015.4/8)

※こちらは、YouTubeにあった、「ボッティチェリとルネサンス展」の作品解説。
*[JP/IT]「ボッティチェリとルネサンス -フィレンツェの富と美」展解説 [前編]

※Bunkamuraザ・ミュージアム 『ボッティチェリとルネサンス』展 ビジュアルツアー

ルネサンス以降でも、近代以前の欧州では(日本でもですが)、「金貸し」や「金融業」は社会的に嫌われた職業だったようです。「ヴェニスの商人」の話の背景にはこういう事情があったのでしょう。いろいろと。

シェイクスピア全集 (10) ヴェニスの商人 (ちくま文庫) ヴェニスの商人 [DVD]

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2015年4月 2日 (木)

英語と日本語の世界観の違い… 「日本人のための英語学習法 」

何年勉強しても一向に(私は)上達しない英語。勉強不足の件は脇に置いといて、やはり、日頃から漠然と感じる「日本語と英語の本質的な(世界観・思考様式)の違い」。それを、明快に解説してくれる本を(たまたま)見つけたので、ご紹介です。

日本人のための英語学習法 (講談社学術文庫):720円+税
日本人のための英語学習法 (講談社学術文庫)

中身の主な点を挙げてみると・・・

・すべての現象を日本語は「コト(事)」、英語は「モノ(物)」と捉える。

・故に、英語は簡単に名詞が動詞化したり、動詞が名詞化する。

・日本語の動詞は、初めから「誰か・何か」が行うものと決まっていて、だからこそ主語の省略も可能だが、英語の動詞は、あくまで、それ単体で存在。従って、主語や目的語をつけて、正しい語順で並べないと文としては成立しない。

・前置詞の使い分けイメージ。

・英語では、まず「私・I」があり、この主体が周囲の世界を認識していくのに対し、日本語では、あくまで相手・周囲との関係性の中で自分を捉えるので、一人称も二人称も状況によって変化し、自己主張も強くなりにくい、などなど。

I have no money. とか、「ないカネを持っている」って、なんじゃらほいと、以前はよく思いましたが、この本の解説を読んで、少し分かったような気がしました。

(「おカネがない」は日本語では「コト(状態)」、英語の「no money」は「モノ(存在?)」と考える)

また、英語(インド・ヨーロパ語)と日本語(なお、東アジアの言語はご近所でも違いが大きいですね)の「自分」の捉え方の違いは、文化や思考様式の違いに関係する話で興味深かったです。

書名は「英語学習法」ですが、内容は「比較言語(文法)学」みたいな感じで、分量も180頁あまりの文庫なので気軽に読めます。

英語の思考方法にもやもやと疑問を感じる方には面白いのではないかと思います。ご参考まで。

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…もっとも、「だから欧米人は個人主義」で「日本人は和を重んずる集団主義」ということまで話が行ってしまうと、一面的な見方に過ぎるとも思います(中国は民主的ではないけど、中国人は超個人主義。ドイツ人やロシア人は個人主義的ではなさそうですが、すごく思索的あるいは議論好き。それに、英語の本場の英国社会って“個人主義”なんですかね?)。

日本語は使いこなせれば便利な言葉で、京都人の様に婉曲表現ばかりで話すこともできるし、大阪人のように直裁的に話すことも、格式張ったお役所言葉だけで文を構成することも可能。英語を語順通りに直訳しても、「てにをは」を工夫すれば、どうにか文に出来ます。言葉と文化の相互の影響は、重要ではありますが、それだけではないように思います。

また、「私」が強い文化では、たいがいは他の一般人を上回る強い自我を持った「カリスマ・リーダー」「ビッグ・ボス」「独裁者」「個人崇拝」もまた出現しやすく、こうなると、「個人主義」もすぐ消えて、「忠誠/loyalty」ばかり求められる社会になる。英語で「上司」はもろに「BOSS」ですし。

(以前はやった「日本人論」では、西洋などがリーダーシップの強い「騎馬民族型」で、日本は調和型の「農耕民族型」といってましたね)

一方、実は特定の個人を崇拝するのは嫌い(組織のトップも個人名ではなく一般的肩書などで呼びたがる)で、相互の関係性を重視する日本社会では、「ワンマン」な独裁者はめったに出ないし、平等指向も強いが、内輪の「和」や「帰属意識」を重視するあまり、「同質主義」「同調圧力」が集団内で強まって、少数意見を押しつぶしたあげく「集団自殺」的行為に走りやすい。

どちらも一長一短あるわけで、この特質(長所・短所)を自覚した上で(イジメはどこででも起きるが、それにどう対処するかが問題)、短所が肥大化しないような持続的な社会の努力が必要だろうと思います。

実際、日本人は「建前では控えめ」ですが「本音はプライドも競争心も人一倍強い」のが実相。また、かつて山本七平氏がよく指摘されていましたが「日本人が最も信用しない人間は、神や仏を信じない人などではなく、“自分が信じられなくなった”と言う人物」。「オレを番号で呼ぶな」とか「それで君の意見はどうなんだ?」とかも日本人お気に入りのセリフ。「大衆」でくくられるのも、「金魚のフン」「腰巾着」的人物も、普通の日本人は嫌います。

これで日本人を、自我や個人の意志が弱い国民と断ずるのは、ちと早計ではないかと思います。これこそ「現代(近代か?)の神話/都市伝説」かも。

「サムライ」に「あなたは自己の意志が弱い」などと言ったら怒るでしょうしね。

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2013年12月28日 (土)

使える?ミリ本「SAS式 メンタルトレーニング・マニュアル」

根性も体力から。

SAS・特殊部隊式 図解メンタルトレーニング・マニュアル(1900円+税)
SAS・特殊部隊式 図解メンタルトレーニング・マニュアル

最近、軍事関係の話が多くて恐縮です。

さて、いわゆるミリ本(ミリタリー・軍事関連本)は、一般人が読んでも実用には直結しない、ニュースや映画を見るときとか、アウトドアスポーツやサバイバルゲームでもするときとか、防災関連で調べるとか、こういった場合の「参考情報」以上のものにはなかなかならないのがほとんどですが、この本は多少、一般人のトレーニングにも応用できるかもしれません。

著者はSAS(英国特殊空挺部隊)の本ではお馴染みのクリス・マクナブ氏。要するに特殊部隊の養成訓練マニュアルを一般向けに紹介しているのですが、第1章で「兵士」の心がまえ的なことを紹介した後、すぐ次の第2章では「栄養と休息」が来て、「精神力の維持も体力・健康から」ということが科学的に説明されます(「脂肪の消化には大量の水分が必要」とわざわざ1頁をとって解説)。この点、「スポーツ科学」の本のようでもあります。

以下、表題どおり、主にメンタル面について(戦闘技術の話はほとんどありません)、リーダーシップやチームワーク、課題解決、困難に耐えること、兵士の倫理観倫理観に欠ける兵士は規律にも欠け、残虐行為を起こしやすく、作戦全体に悪影響を及ぼすということに注意喚起されています)、ストレス管理などについて述べられており、いわゆる「根性論」「精神主義」とは無縁です(もちろん生身の人間集団たる実際の軍隊ではこう理想どおりにはいかないでしょうが)。

といっても、それだけなら、普通のスポーツ科学の本を読めばいいわけですが、現代では、一般人も事故やテロや災害に遭遇して、凄惨な状況に巻き込まれることもあるので、そういう場合を想定するなら、この本にでてくる「トラウマとショック」(第7章)などは参考になるかもしれません(なお、応急手当の紹介もあります)。

トラウマへの対処などは、精神医学か、消防士向けなどの専門書ならありますが、文字通り「専門書」で、難しい本が多いので、こちらの方が多少は読み易く、「スポーツ科学+非常事態対処」が一冊にまとまっていて、入手もしやすいかなと思い、ご紹介です。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

世界では軍隊も変わっています。頭数だけ揃えるのが最優先だった徴兵の時代は終わり、軍隊はいまやプロの技術者集団。いつまでも、敗戦までの旧日本軍方式に固執する人の居場所は少なくとも先進国にはもうないでしょう(北朝鮮や大陸中国ならどうか知らんけど)。特に、PKO活動などに際し、旧軍式傲慢根性論を持ちだしたら、現地の状況や現場の隊員の任務遂行を悪化させるだけ(この点、自衛隊は非常に慎重にやっているようです)。日本国民も、もう一度「敗戦」するのはお断りですし。

こうして考えてみると、一見戦争に強そうな全体主義・軍国主義国家がなぜ(最初の奇襲攻撃は成功しても)、必ず最後には戦争で負けるか、または自己崩壊するか? 実は単純明快。

強権主義国家では、権力のある者は支離滅裂な思いつき命令を連発して、しかも無責任。また、下の者は上に従うだけ。国全体が硬直した「マニュアル社会」。誰もまともに自分の頭を使わない。意見をいう者はぶち込まれる。一見団結しているように見えて、それは外的強制によるもの。「威張りたがりやの裸の王様」と「指示待ち人間の集団」の組み合わせでは、ハナから先が見えている。

それに比べ、民主主義の国では何をするにしても、知恵を絞って関係者と利害調整を図らなければならないし、ヘマをすれば非難の嵐。自由社会=競争社会の側面もある。要するに、国民個々人全ての分野・段階で「課題解決能力」に日々雲泥の差がついてしまっているわけです。結局、ソレが総合的国力となって現れる。普段はみんなバラバラでも、一旦、国民各自が自発的に団結すれば強く(むしろ熱狂があると怖い)、一方で、組織の運用に柔軟性もある。

チームの団結も個人が結束するから意味があるので、金太郎飴の集団では烏合の衆にすぎない。できそこないのロボットもどきの兵隊さんでは人海戦術以外はやりようが無いです。

また、全体主義の社会では、個人の意見は圧殺されて集団を優先するわけだが、各人が属する「集団」や「派閥」もまた、数知れず存在するのだから、集団同士が抗争を始めたら歯止めなし。アナクロさんの「願望」とは全く逆に、「全体主義・集団主義」の社会の方が、「たこつぼ集団」や「派閥」を多数出現させ、派閥抗争により、社会や国家は四分五裂となり、分裂する。例外などはない。最悪の場合は内戦となる。いわば、国の中に無数のミニ国家が出現して戦国時代化するわけだ。

(各集団が、勝手に「お国のため」と主張し合い、意見が違う者を非国民呼ばわりして抗争を始める。「全体主義」が「国家崩壊」に一直線なのは当然の成り行き。こんなの、冷戦中、日本が「自由主義陣営」の一員だったころは常識だったが、最近、負けた戦争の言い訳と不祥事ばかりの「愛国ビジネス」の連中が「昔は良かった」論を言い募ってウンザリだいたい集団主義の人間というのは、群れから切り離されて独りボッチになった時点で、精神的に根無し草となり、ほとんどはアウト。また、全体主義国家のトップは常に周囲が命令に従うから、戦争するときも、「敵」までが同じように自分に協力してくれるように思い込む。当然、作戦も、根本的な部分で、独りよがりで幼稚なものにならざるを得ない。見かけはコケ脅しで恐ろしいですけどね。それに、自分が集団主義だと、相手も同じだと考えがち。相手の「国」「軍隊」「集団」等々についても全部「一枚岩」だと考える。もちろん、実際には内部の各立場によって、多様な意見があるのに、それも見抜けない。しかも皮肉なことに全体主義の国の方こそ、各集団がタコツボ化して、かえって、てんでんばらばらに行動しがち。しかも建前では「一枚岩」となっている上に、「身内の恥は晒さない」&「自分らの既得権益や分け前はよそに渡さない」&「秘密の共有こそ内部の団結を高める」とばかりに秘密主義だから横の連携もない。全体主義の国が戦いに勝つなんてことがあれば、それこそ、むしろ例外。繰り返しになるが、「団結」は「自主自立」した人や団体がするから意味があるので、コピー集団を上や外から建前だけ縛っても、何の強さもありません。見掛け倒しです

かくて、個人がバラバラですぐに社会が崩壊するはず(まあ、個人が自律・自立できない民度の低い社会では、そういうこともあるでしょうが)の自由社会は自己調整機能が働いて、何時までたっても崩壊しないがあらゆる全体主義社会は、長くても3世代と持たずに自壊か日常的に混乱するのが普通。経済も回らないし、外部からの強制が緩んだとたんに手前勝手な民度の低いわがまま人間が勝手に暴走テロやクーデターが頻発した戦前・戦中の日本もそれに近い。逆に、自由な現代日本社会は全く安定しています。そういえば、お隣の中国・台湾の場合も、大陸中国がず~~っと、動乱・暴動だらけで民度の向上も見られないのに、台湾社会は安定してます。

むしろ、「国策(国家プロジェクト)遂行」にとっても、個人が直接国に忠誠を尽くす状態のほうが、人材の登用がしやすい。これは別に米英とかの話ではなくて、志士が日本中から出現した日本の明治維新のころの社会の雰囲気もそうだったはず。

「個人の活躍」が嫌いなのは、大概は「役人集団(軍隊も役所です!)」。それも、日本の場合は、世界的に左右の全体主義が流行った20世紀初めごろに、この海外からの輸入思想にかぶれた連中が、民族主義と軍国主義もどきの化粧をして主張していただけ。全く日本の文化の伝統などとは関係がない「全体主義」は「規格大量生産」「大不況」の一時期にだけ流行った思想でおまけに最後は全て破滅(自滅)しました。

(人間も「規格化」して「大量」に「兵隊」を揃えれば何でも勝てると単純に思ったのでしょう。思想にも流行があるのです。しかし、不易と流行という言葉があるように、一時の流行熱に浮かれるのは良くありません。それに、一般的に下っ端の兵隊レベルが優秀でまた、、トップの権限が肥大化するほど、反比例してトップは無能になっていくのが普通です)

ちなみに、第二次大戦中の日本では、「国家総動員」の掛け声とは裏腹に、陸海軍や各省庁はバラバラ以上に犬猿の仲。果ては陸軍が空母や潜水艦、海軍が戦車を造り、「帝国陸海軍相争い、その余力をもって米英と戦う」などと国民に馬鹿にされる始末。各軍部内の派閥抗争もひどかった。また、当時の軍の作戦や部隊運用は「お役所仕事」が最果てまで行き着いた硬直の極み。まさに末期の帝政ロシアや旧ソ連とソックリですが、これも「コミンテルンの陰謀」かな?「強権官僚」支配のたどり着く先はいつも同じというだけのこと。役人は権力の強さと能力が反比例する生き物です。

そして、国の滅亡を招いた強権官僚の言い訳はいつも同じで「私は法律通りにやっただけ責任ありません私が決めたわけじゃありません(じゃ誰だよ?それに何で遅れて自殺をはかったの?「自決」にしてもかわった方法ですな。TJ陸軍大臣兼総理ドノ)」という。今の自衛隊では「自分の頭を使う」ことや「自主性」が強調されているそうですが、これも旧軍時代の反省からきたもの。例の元空自“参謀総長”が好きなだけ「自己主張」できるのも、「敗戦」で「個人の意見が尊重される社会」になったお陰ですな。戦前・戦中なら個人の「意見」どころか、「命は鴻毛(鳥の羽根)よりも軽し」「一億玉砕」ですよ。そもそも戦争自体も「富国」のためにやってるわけだから、全くもって、手段と目的が主客転倒した官僚的な本末転倒さだ。

戦争では、兵士が「精強」であることは必要条件ではあっても、戦勝のための十分条件とは言えない。戦争は競技会じゃない(敵の得意技や新兵器は常に“無効化”や封じ込めを図られる。スポーツや受験だったら“反則負け”、ビジネスなら営業妨害になってしまうが、戦争ならこれが常態=普通)ですから。

チームのメンバーがお互いに(各特技を)カバーしあえるとか、練度・レベルが同じくらい、というのは、チームの強さにつながりますが、「全員が同質(金太郎飴)」というのは「全員の弱点が同じ」ということです。ここを勘違いしてはいけません。

十人十色なら、各人の強みも弱みも十色。倒すのは大変です。しかし、十人一色なら?

同一種が多数いるから「サンプル」も多数で、特徴のパターンを読みやすく、弱点を一個見つけたら、一挙に相手を全滅させられる、あるいは、一つの原因で全滅が起こる。これは注意すべきことです。

集団主義者というのは、個人では決断の責任をとりたくない、という無責任主義者のことです。

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※この本も内容がALL in ONE であなどれません。
ボーイスカウト・フィールドブック

※第2次大戦で、「米軍が分析した日本軍」のレポートと、以前から定評のある「~軍の小失敗の研究」の日本軍ケース。 そして、旧陸軍では「対米戦闘教育」が戦争も終盤の昭和18年にもなって始まったことなど“自転組織”帝国陸軍での著者の直接の体験記。
日本軍と日本兵 米軍報告書は語る (講談社現代新書) 日本軍の小失敗の研究―現代に生かせる太平洋戦争の教訓 (光人社NF文庫) 一下級将校の見た帝国陸軍 (文春文庫)

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2013年12月15日 (日)

新刊紹介 : 「経済思想の巨人たち」

まだ読んでる途中ですが・・・。

経済を市場原理主義で放置しておくと、社会の格差がどんどん拡がっていくのを我々は目の当たりにしているわけですが、本書では、経済を過度に国家統制にすると、国自体が滅んでいく様子が、いろいろな思想家を紹介する中で説明されていて興味深いです。

経済思想の巨人たち (新潮文庫) 630円+税
経済思想の巨人たち (新潮文庫)

取り上げられているのは・・・ヘシオドス、管子、プラトン、アリストテレス、ディオゲネス、エピクロス、ゼノン、司馬遷、トマス・アクィナス、トマス・モア、デフォー、マンデヴィル、石田梅岩、ケネー、安藤昌益、ヒューム、アダム・スミス、ベンサム、海保青陵、マルサス、リカード、J・S・ミル、マルクス、福沢諭吉、ゾンバルト、マックス・ウェーバー、シュンペーター、ケインズ、北一輝、石橋湛山、ハイエク、コース、フリードマン、ブキャナン、アロー、ベッカーなどで、いわゆる「経済学者」ばかりでなく、古代から現代まで、国内外の思想家と社会に与えた影響が幅広く紹介されていて、そこが「経済学」ではなく「経済思想」の巨人紹介というわけで、歴史の本を読んでいるようでもあり、読みやすいです。

司馬遷の項目で説明されている、中国の歴代王朝の専売制と治乱興亡の関係の説明などは非常に興味深いです。

(※なお、本書は1997年に新潮選書で刊行されたものの文庫版です)

ソ連が90年代初頭に崩壊した時は、一時、「資本主義が勝った」みたいに触れ回ってた人たちがいて、それが、市場原理主義者の跋扈につながっていったようですが、ソ連の失敗というのは「国家独占資本主義」の「官僚統制」(国民に政府批判を許さない自由のない社会。労働者の休暇は多かったようですが)による「産業計画経済」が国民=消費者のニーズに対応しきれなくなったからで、要するに「自滅」しただけのこと。他方の「西側」では戦後「混合経済」(市場経済と計画経済を適度にミックス)と「福祉国家」で、競争と規制、自由と安定をうまくバランスさせてきたから社会が自壊せずに済んでいるので、「勝ち負け」といえるのか、私は疑問です。

(今の日本は官僚統制と競争放置がまだら模様に混在して、よくわからん状態になりましたな)

また、英国本国が戦後、経済で不振になったのを「福祉政策が行き過ぎて労働者が怠け者になったから」(それをサッチャーが改革したとか)という論調をよく聞きましたが、福祉国家は他にも多いし、英連邦の他の国は順調に経済成長しているのを見ると、これは違うんじゃないかと。むしろ、「戦争に勝ってしまった」ので、アメリカのような大陸国家&大人口の大衆社会でもなく、日本やドイツのように抜本的社会改革もできず、土地貴族や大富豪みたいなのが小さな島国で未だに生き残っていて、富が偏在(=一部で富が抱えこまれている=本人はいいが、社会的には存在しないも同じこと=悪く言えばカネのブラックホール)し、経済の血液たる貨幣の循環が悪いままだからじゃないか(財閥経済だった戦前の日本や今の韓国がそう。それで、「政府は(税金とかなんかで)“富の再分配”をちゃんとやれ」という声が強まる)と思います。

(推理小説でも、殺人犯の動機が概ね、米国だと「自分の事業の邪魔者を消す」で、英国だと「遺産目当て」。この違いは大きい)

サンダーバードを一家で運用できるような大富豪がいくら贅沢したって、社会全体にでてくるカネはしれたもの。年収1億の人1人より、年収500万の人20人を相手に商売したほうが、元のパイが同じでも、経済は活性化・成長するだろう、ということです(現在、多少ほころびが出ていますが、一時は1億総中流と言われ、社会全体が「小金持ち(プチブル?)」になった戦後日本がそうです)。

といっても、英国の場合、いまさら革命になることはないでしょうが、独仏が幅を利かすEUを脱退して(ユーロも使ってないし)、英連邦(インドもある)にアメリカを引き込んでFTAやTPPをやり、「大英語圏経済帝国」を画策したら、英本国経済も大復活、と考えられなくもない。

EUにしろ、「英語圏帝国」にしろ、日本にはマネができない話(協調はできる)。我が国の将来を考えると頭が痛いです。自分の将来の方はもはや胃が痛くなるが・・・。

ちなみに、大陸中国は「共産党」という名称の党が一党独裁していますが、建前ですらもはや共産主義などどこにもなく(この点は旧ソ連の方がずっとまし。また、キューバなど、米国の経済制裁が継続する中、教育・医療は無料の社会を実現している)、権力と腐敗で歪んだ拝金市場経済(?)があるだけ。しかし、言論の自由も人権もろくになく、これを例によって「東洋の文化」だとか「共産党は旧日本軍を追い出したから偉い」とか、屁理屈を捏ねている。だったら「拝金主義」や「汚職」、「対外膨張主義」「歴史復讐主義」も「東洋の文化」なんですかね? むしろ、近代西洋帝国主義の悪癖に近い気がするが。秘密警察があるような強権国家の寿命はだいたい現役3世代(70年前後)くらいが相場。“3代目”ばかりの彼の国。再びの激動の時代は近そうです。

中国官尊民卑思想の源流たる儒教や科挙の本場(未だに、これに憧れる一部日本人もいるようだ…イヤハヤ -_-; )。「国民全部が公務員」「官僚統治」の「共産党支配体制」は、中国社会の伝統に馴染んでいるのかもしれませんが、歴代王朝が塩などの生活必需品を専売制にして利益を独占→庶民は安いものを求めるので闇取引が横行→社会は混乱し、闇商人や地方軍閥が巨大化→内乱になって王朝が崩壊。この繰り返しが中国の歴史。

…ということが司馬遷の項目で説明されてます。短いけど、この指摘だけでも読む価値があるように思います。

他にも、福沢諭吉(現在1万円札の肖像だ)ケインズの項目なども示唆に富みます。

最近、「国家なくして国民なし」と、民主主義国家の政治家とは思えないお考えの政治家が失言と訂正を繰り返して「話題」になってますが、抽象的な「国家」が実在の人間集団たる国民より先にあるわけ無いでしょう(単語をいろいろ入れ替えると面白いですよね。「党なくして党員なし」とか。党員が誰もいなくなっても、この方の「党」は残るのかしら?それとも「離党者には制裁」でも加えるのか?まるで独裁国家の「党」、でなければ暴力団かカルト宗教のやり方。さすがは“オタク政治屋”)。政治家が自分への投票者よりも先に存在して、選挙民よりも偉いつもりなんですかね? それとも、「国家株式会社」が「国民(税金を払っている方)」を雇っているつもりなのか何もかも主客が転倒してますな。この方、在籍政党からして間違ってるのでは。まして、国の経済運営を任せるのは絶対無理。慶応大学の学祖・福沢諭吉先生のダメ出し確実です。

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